研究概要 |
フラストレーション(欲求不満状態)に直面したときの攻撃的反応は,個人間で大きく異なる。他者を責める(他罰)傾向が強い個人もいれば,自己を強く責める(自罰)個人もいる。極度な他罰的反応や自罰的反応は,ときとして,問題行動に発展することが示されている。それでは,他罰的反応や自罰的反応は,どのような認知・神経プロセスを介してあらわれてくるのだろうか。本研究では,他罰傾向,自罰傾向および無罰傾向の高い個人を対象とし,彼らがフラストレーションを体験しているときの脳活動を,機能的核磁気共鳴画像法(fMRI)を用いて測定する。そして,脳活動の結果に基づき,攻撃的反応の個人差と関わる認知・神経プロセスを解明することを目指す。平成23年度は,被験者の選定とfMRI実験の予備実験を実施した。被験者の選定には,日本語版の絵画欲求不満検査法(P-Fスタディ)を使用した。この方法では,フラストレーションを引き起こす発言に対する被験者の応答を測定し,その応答を得点化することで,その被験者の攻撃特性が測定される。この手法を用いて,他罰傾向,自罰傾向,そして無罰傾向の高い個人の選定をおこなった。また,fMRI実験の予備実験では,P-FスタディをfMRI装置内で実施し,フラストレーション場面と一般的知識を問う統制場面体験時の脳活動の測定をおこなった。その結果,フラストレーション場面において,腹外側前頭前野および島皮質の活動の増加が認められた。これらの領域は,フラストレーションの処理に関わる脳領域を特定した先行研究と合致していることから,フラストレーション研究におけるP-Fスタディの有用性が確かめられた。平成24年度では,選定した被験者を対象にfMRI実験を実施し,攻撃特性の個人差と関わる認知・神経基盤を解明したい。
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