研究課題
わたしたちは日頃からフラストレーション(欲求不満)を経験するが,その認識や反応は個々人間で大きく異なる。アメリカの心理学者であるSaul Rosenzweig(1934)は,フラストレーションから生じる攻撃的反応を3つに分類し,「他罰」「自罰」「無罰」とそれぞれ称した。そして,臨床研究において,他罰や自罰的な攻撃傾向の特に強い個人が,問題行動や精神疾患を伴うことが示されている。しかしながら,それぞれの攻撃傾向に関わる認知プロセスや脳構造は未だほとんど検証されていない。極端な攻撃的反応が,自己や他者を危険に晒すことを考えると,どのような認知プロセスや脳構造を持つ人が,このような行動を起こし易いのかを明らかにする必要がある。そこで,本研究は,機能的核磁気共鳴画像法(fMRI)を用いて,自罰傾向の強い個人と他罰傾向の強い個人を対象とし,フラストレーション体験中の脳活動の計測を行った。その結果,自己の願望や目標が阻害されるフラストレーション体験時において,自罰群と他罰群で異なる脳部位の活動が認められた。自罰群では,左側の前頭前野背外側部の賦活が認められ,これは,怒りを弱めるための認知制御活動を反映している可能性が考えられる。一方,他罰群では,眼窩前頭皮質を含む前頭前野腹外側部において活動の増加が認められたことから,感情的な認知処理が優先されていると考えることができる。本研究の成果は,認知神経科学的な観点からフラストレーションの効率的な対処法を考える上で非常に重要な役割を果たすだろう。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Journal of Eye Movement Research
巻: 5 ページ: 1-10