研究目的とその意義・重要性:従来、癌幹細胞を標的化することにより癌の根治が可能であると考えられてきた。しかし、癌幹細胞が生み出す細胞学的多様性、癌幹細胞への再移行現象、癌幹細胞自身の特性と周囲環境が絡み合って形成された治療抵抗性メカニズムを考慮すると、一過的な癌幹細胞を標的とした治療法では癌の根治は難しいと考えられる。そこで、本研究においては、癌幹細胞が産生する分泌型microRNAを介した情報ネットワークを解明し、その制御を行うことにより癌幹細胞を中心とした癌の社会構築を破綻させる新しい癌幹細胞標的治療法を開発することを目的とした。 研究成果:肝臓癌において、網羅的マイクロRNA解析を行い、癌幹細胞が血管新生とヒストンの脱メチル化を行う特徴的なマイクロRNAを発現していることを同定した。また、大腸癌において、活性酸素種(ROS)の代謝が低い細胞で、特徴的にエクソゾーム包埋型のマイクロRNAが産生され、その中に、let7 familyを含む特徴的なマイクロRNA発現を同定した。さらに、これらの因子が周囲環境の代謝機構を変化させる可能性について見出し、これらの解析を進めている。
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