研究概要 |
関節内骨折は,スポーツ外傷により生じやすく,著しい関節機能の低下をきたす恐れがあり,後遺症なく治すためには,骨軟骨片を元通りに固定する手術が選択される.しかし,挿入したスクリューが関節面へ逸脱し,相対する関節面に軟骨損傷が生じる欠点が報告されており,既存の固定材料では十分な修復は期待できなかった.そこで新しい固定材料として,固定性に優れ,骨組織の再生を促す骨誘導能を有する骨製スクリューを開発し,関節内骨折に対する骨製スクリューの有用性を明らかにすることを目的に実験を行った. まず,和牛の大腿骨骨幹部の皮質骨中間層から骨製スクリューの材料となる緻密骨を採取した.共同開発した精密コンピューター旋盤を用いて骨製スクリュー(直径2.50±0.01mm,長さ12mm,ピッチ1mm)を作製した.対照群として臨床で頻用されている金属製スクリュー(ステンレス製)を選択し,骨製スクリューと同一形状となるよう作製した. 次いで日本白色家兎の膝蓋大腿関節面を露出し,大腿骨滑車を骨切して骨軟骨片を作製した.遊離した骨軟骨片に骨製スクリュー2本を関節面から2mmの深さまで挿入して固定した.同様にして金属製スクリューを用いた手術を行った.術後12週で観察し,スクリューが関節腔内へ逸脱している手術失敗例の割合を調査した. 骨群では関節腔内への逸脱したサンプルは認められなかったのに対して,金属群では16本中3本(19%)のスクリューが関節腔内へ逸脱していた.今後はマイクロCTやデジタルキャリパーを用いて関節表面からのスクリューの深さを計測し,詳細に検討する予定である.
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