関節内骨折は,著しい関節機能の低下をきたす恐れがあり,骨軟骨片を元通りに固定する手術が選択される場合がある.しかし,挿入したスクリューが関節面へ逸脱し,相対する関節面に軟骨損傷が生じる欠点が報告されており,既存の固定材料では十分な修復は期待できなかった.そこで新しい固定材料として,骨製スクリューの有用性を明らかにすることを目的に実験を行った. 和牛の大腿骨骨幹部の皮質骨中間層から緻密骨を採取し,精密コンピューター旋盤を用いて埋め込み型骨製スクリュー(直径2.50 ± 0.01 mm)を作製した.家兎の膝蓋大腿関節面を露出し,大腿骨滑車を骨切して骨軟骨片を作製した.遊離した骨軟骨片に骨製スクリュー2本を関節面から2 mmの深さまで挿入して固定した(骨群n = 16).同様にして同型のステンレス製スクリューを用いた手術を行った(金属群n = 16).術後12週で骨群はマイクロCTを用いて,金属群はデジタルキャリパーを用いて関節表面からのスクリューの深さを計測し,スクリューが関節腔内へバックアウトしている手術失敗例の割合を調査した. スクリューの深さは骨群:平均1.06 ± 0.30 mm,金属群:平均0.52 ± 0.54 mmであり,金属群は骨群よりも有意に低値であった(P = 0.0004).手術失敗例は骨群では0本(0%)であったのに対して,金属群では3本(19%)が関節腔へバックアウトしていた.マイクロCTでは骨製スクリューと周囲の海綿骨との間に良好な骨癒合が得られていた. 骨製スクリューは金属製スクリューと比較して有意にバックアウト量が少なかった.骨製スクリューは骨誘導能を有しているため早期に母床と癒合した結果,バックアウトが抑制されたと推察した.以上から,遊離骨軟骨片固定術には骨製スクリューが金属製スクリューよりバックアウト予防の観点で優れていると結論した.
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