研究概要 |
小胞体ストレス応答を惹起し、癌特異的アポトーシスを誘導しうるREIC遺伝子治療のさらなる臨床応用を見据え、既存のいくつかのBip/GRP78抑制化合物を用いて、in vitroにおけるREIC遺伝子治療との相乗効果を検証し、REIC遺伝子治療の併用療法の意義を基礎的に解析することを目的とした。Bip/GRP78抑制化合物のなかでGRP78 inhibitorであるEpigallocatechin gallate, HSP90 inhibitorである17-AAGによるBip/GRP抑制効果とその至適濃度を検討したが、それのみで細胞がアポトーシスし、Ad-REICとの併用実験において、相乗効果を得る至適条件を見いだすことはできなかった。より特異的なBiP抑制法を確立し、検討する必要があると思われた。 Ad-REICと小胞体ストレスにおけるメカニズムを解明する上で、Ad-REICに耐性である膀胱がん細胞株(T24, J82, TccSup)を用いて浮遊系培養条件におけるAd-REICの効果を検討したところ100MOIで有意なアポトーシスを認め、さらに1000MOIまで濃度依存的効果を認めた。また、多剤耐性膀胱がん耐性株(KK47/ADM)を用いて、アドリアマイシンとの相乗効果を検討したところ、Ad-REICはKK47/ADMにおいて低濃度アドリアマイシンに対する感受性を増強した。 ERストレス応答において、そのストレスセンサーとして考えられているIRE1α細胞質シグナル伝達ドメイン発現プラスミドを独自に作成し、それを前立腺がん細胞(PC3)にトランスフェクションすると、アポトーシスが誘導された。ERストレス関連分子を制御することにより、REIC遺伝子治療のさらなる治療効果を期待できると考えられた。
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