本研究は,乳幼児の日常生活における移動運動と空間認知の発達的変化から,私たちが「家」と呼ぶ人間の生活環境の成立過程を検討することを目的とした。本年度(平成24年度)は,初年度(平成23年度)に行った移動運動を含む行為と場所の分析結果を基に,以下の2点の研究を行った。 (1)乳幼児の日常場面における生後18ヶ月間の縦断的観察から,「家」を構成する資源として3つの要素(表面,物,人)を取り上げ,行為者の移動運動との関係を分析した。(2)身体―環境のよりよい相互関係を試行する,乳幼児期の生活環境のシミュレーター・アプリケーションの開発およびデザインを行った。 (1)については,平成24年度に国際学会(The 12th European Workshop on Ecological Psychology)にて発表した。(2)については,平成25年度7月に開催予定の国際学会(The 17th International Conference on Perception and Action)にて発表が採択されている。本アプリケーションは,AR(Augmented Reality)技術を用いた体験型シミュレーションが可能である(iPhone,iPad対応)。利用者は,乳幼児期に家の中でどのような行為が生じていくのか,実際の観察データに基づいたアニメーションの再生と共にシミュレーションし,月齢毎の変化を知ることができる。今後の展開として,まずクローズドベータテストを行った上で,正式版の公開を検討し,より実践的な知見の共有と拡大に努める。
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