本研究は、オープンソース・ソフトウェアの開発に参加する開発者の地理的・社会的な属性やモチベーションに関して、国別の比較を念頭に置いた調査を行うことを目的とした。2003年から2004年にかけて各国で行われた(しかしその後継続されなかった)FLOSS調査との比較可能性を重視した質問設計を行い、経時的な比較も重視することにより、オープンソースの草創期と、すでに人口に膾炙した現在で、開発者の考え方にどのような違いがあるのかを明確にすることを目指した。同時に、今後も定期的に同種の調査を行えるよう、オープンソース・ソフトウェアを活用した、実施が安価で容易な調査の仕組みとノウハウそのものを確立することを狙った。 海外における学会発表や、オープンソース開発者らの会合に積極的に参加した結果、申請者の試みは幸いにもオリジナルのFLOSS調査を手がけた研究者らも含めた多くの賛同を得ることになり、申請者の当初の想定よりもさらに本格的なものへと発展した。結果として、海外の研究者グループとの共同で、2013年中をめどにFLOSSの本格的後継としての「FLOSS2013」調査を行うことが決まった。加えて、研究の過程でオープンソース型開発に特有のソフトウェア開発様式を見いだし、論文化することに成功した。 なお、すでに質問票の作成、オンライン・アンケート・システムの準備はほぼ終わっているが、研究の過程において、この種のオープンソースに関する調査においては、調査を実施する対象が開発支援サイトの場合、回答者の属性が個人ベースの開発者に偏りがちになるという、いわゆる「caveman効果」が強く出る可能性が高いことが判明した。この点も考慮に入れた上で、多様な調査対象の選定を行い、今後も研究を進めていく予定である。
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