研究課題/領域番号 |
23800053
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
松谷 宏紀 慶應義塾大学, 理工学部, 講師 (70611135)
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キーワード | 計算機 / ネットワーク / NoC / メニーコア / 3次元積層 |
研究概要 |
半導体チップを垂直方向に積み重ねる3次元チップ(3次元IC)が注目を浴びている。3次元ICでは、チップマルチプロセッサ(CMP)を構成するために必要なチップ(プロセッサ、メモリ)を積み木のように組み合わせることで、新たにマスクパターンを作り直すことなく、アプリケーションに合わせてCMPをカスタマイズできる。本研究の目的は、CMPを対象に、各チップ内の部品同士をつなぐチップ内ネットワーク、および、チップ間無線技術を用いてパッケージ内のチップ同士をつなぐチップ間ネットワークを統合したワイヤレス3次元Network-on-Chip(ワイヤレス3-D NoC)の最適化手法を提案することである。 ワイヤレス3-D NoCにおいては積層されるチップの2次元ネットワークはチップ設計時には不明である。そのため、チップ積層時、もしくは、動作時に各チップのトポロジ情報の交換、および、ルーティングの計算が必要となる。また、ルーティングによって通信遅延が大幅に変動するため、ルーティングの最適化が必要である。 まず、トポロジ情報の交換、および、ルーティング計算のために、既存の不規則トポロジ向けのルーティングであるUp*/down*ルーティングを応用することにした。Up*/down*ルーティングにおいてはスパニングツリーの根(ルート)の位置によって通信ホップ数が変動する。そこで、ワイヤレス3-D NoC向けのルーティング最適化手法として、複数のスパニングツリーを用い、かつ、トラフィックパターンに合わせてスパニングツリーの根の位置をスパニングツリーごとに最適化することで低い通信遅延、高いスループット性能が得られることを明らかにした。次に、ネットワークシミュレータ上に上述のワイヤレス3次元CMPのシミュレーション環境を構築し、ルーティングの最適化手法の有用性を確認した。現在は提案手法をワイヤレスCMPのフルシステムシミュレーション環境で評価を行っている。 さらに、本研究に関連する研究トピックとして、ワイヤレス3-D NoCの電力制御、複数電源を用いた細粒な電力制御についても取り組んでおり、すでに研究成果が出ている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究は「研究活動スタート支援」の支援を受けている。そのため、本格的に本研究を開始したのはH23年9月以降であるが、すでにルーティング最適化のためのプロトコルの検討を終え、シミュレーションを開始できるようになった。また、関連する研究成果としてすでに3件の研究発表を行うなど当初計画以上に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の目標は、提案手法をより詳細に評価し、その成果をまとめて論文として発表することである。 提案手法の有用性を示すには、実際のワイヤレス・チップマルチプロセッサ(ワイヤレスCMP)上でOSやアプリケーションを動作させて、本研究で提案するルーティングプロトコルをアプリケーション性能や消費電力の点で評価する必要がある。本研究では既存のCMPフルシステムシミュレータを拡張することで、ワイヤレスCMPを詳細に評価できるようにする。このための評価環境はすでに構築できており、今後、様々なベンチマークプログラムを動作させ、提案手法の有効性を検証していく予定である。
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