球面上の点集合に対する尺度空間計算の理論的な精度の評価を行う。高速計算を行うために、球面調和関数の近似を用いた。尺度空間解析により球面尺度空間における微分特徴量である停留点を計算すると、この軌跡は木を構成する。この木をたどることで、点集合の局所的および大局的な構造を知ることができる。これを用いることで、クラスタリングを実現することができる。点集合のクラスタリングにおける尺度の自動決定手法として、木の枝分かれまでの長さを基準とした生存期間を定義した。通常、クラスタはその含まれる点数がそれぞれ異なる。その違いは尺度空間中の極値ツリーの枝として現れるが、そういった木の位相的な配置から、クラスタを決定する理想的な尺度を部分木単位で選択する方法についても検討した。 コンピュータビジョンにおける様々な分野で、球面上の点集合として表現されうるものが存在する。特に通常のカメラや全方位カメラなどで扱われる幾何学的な情報は、その投影の原理から、球面上の点集合で表現するのに適している。たとえば、カメラの校正を行う際に使われる基礎行列もしくは基本行列は、誤差を含んだ計測を行った場合、ある一定のばらつきを持った球面上の点群として表すことができ、これらをクラスタに分離し、統計的に統合して、より正確な推定値を求めることができる。また、直線検出手法の一つであるハフ変換では、球面カメラ画像に対するパラメタ空間として球面を考えるのが自然である。本研究では、コンピュータプログラムによって生成された理想的なデータ、および既知の分布を持ったノイズを含むデータを用いて、既存のクラスタリング手法との比較を行い、このクラスタリング手法の適用可能性を検証した。また、実際にカメラなどを用いて撮影された画像を用いて、実用性の検証も行った。これらの成果を国際会議にて報告を行った。
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