柔軟性が低い者では動脈スティフネスが高いことが報告された。しかしながら、柔軟性を向上させる運動であるストレッチングが動脈スティフネスへ及ぼす影響は明らかでない。ストレッチングにはシングル(SNG)およびパートナー(PTN)ストレッチングがあり、それぞれが動脈スティフネスへ及ぼす影響の大きさは異なるかもしれない。本研究では、一過性のSNGおよびPTNストレッチングが動脈スティフネスへ及ぼす影響を検証した。若年者18名を対象に、SNG試行(1種目30秒×40種目)、PTN試行(1種目30秒×40種目)、コントロール(CTR)試行(座位安静20分間)の3条件を施行し、その前後で上腕-足首間脈波伝播速度(baPWV)を測定した。ストレッチングの強度は、痛みを伴わないが筋の緊張感がある可動域最大限の位置まで伸ばすこととした。分散分析(時間×試行)においてbaPWVに交互作用が認められた。CTR試行では経時変化に有意性は認められなかった。SNG試行では、30、45および60分後でベースラインと比較して有意にbaPWVが低下した(ベースライン:1052±23cm/sec、30分後:1001±24cm/sec、45分後:993±23cm/sec、60分後:1003±21cm/sec)。PTN試行においては、45および60分後で有意にbaPWVが低下した(ベースライン:1047±27cm/sec、45分後1005±26cm/sec、60分後:1002±29cm/sec)。収縮期血圧、拡張期血圧、平均血圧および心拍数に有意な変化はみられなかった。本研究は、一過性のSNGおよびPTNストレッチングは動脈スティフネスを低下させるが、その低下の大きさに両試行間で差はないことを示唆した。SNGおよびPTNストレッチングによる柔軟性の向上は、動脈壁硬化の予防・改善に繋がるかもしれない。
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