スポーツ選手の競技場面における過度な緊張や不安などのストレス要因は、高い競技パフォーマンスの発揮を阻害することが多い。特に、女性スポーツ選手は、男女に共通するストレス関連の諸問題の他にも、摂食障害、無月経、骨粗鬆症といった女性スポーツ選手特有の健康問題(Female Athlete Triad:FAT)のリスクも抱えているという。一方、FATへの早急な対応が求められており、FATの出現には心理的ストレスが原因の1つであることが指摘されているにも関わらず、我が国の女性スポーツ選手を対象としたストレス研究は多くはない。 そこで、本研究では、女性スポーツ選手のストレス反応の低減、FATの予防を目的としたストレス対処法を開発することを目的とした。具体的には、①女性スポーツ選手が認識するストレス要因(ストレッサー)の内容の具体化、②ストレッサーがストレス反応に与える影響性の検討(ストレスモデルの構築)、③FATの有無によるストレス反応得点の差の検討を行った。 本研究の結果、「ハラスメント・差別」、「競技力不振・競技環境」、「ジェンダー」、「月経」、「体型の維持・変化」が、女性スポーツ選手のストレッサーとして抽出された。また、これらのストレッサーは、身体的・精神的・行動的ストレス反応を引き起こす要因となることが示された。さらに、FATを発症している選手は、発症していない選手と比較して、身体的疲労感や抑うつというストレス反応を高く出現させる結果が認められた。これらの結果から、競技力発揮のための心理的支援に加え、女性のスポーツ活動の参加の機会を推奨することや健康的な食事法の提案などの多方面から支援を行い、身体的な疲労感や倦怠感を軽減することを目的としたストレス対処法の実践が有効であると考える。また、月経中はストレス反応が顕在化しやすいため、特にストレス対処が必要な時期であると考えられる。
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