本研究では,熟練医師の治療テクニックを訓練者が臨場感を持って体験できる脳動脈瘤治療用トレーニングシステムの開発を目的とした.本システムは手技記録システムと手技体験システムで構成される.研究二年度では,ワイヤの位置と挿入力を記録できる手技記録システムを開発し,記録データを訓練者が体験できる手技体験システムの試作を行った。 脳動脈瘤コイル塞栓術は,カテーテルを用いてワイヤ先端の白金コイルを瘤の中に詰める治療である.手技記録システムは,模擬瘤へのコイル挿入画像と,ワイヤの位置と挿入力を記録する.本システムの構造的特徴は,一軸スライドと力センサで構成したアクチュエータ二台で構成したマスタースレーブ方式にてワイヤを操作することにある.二分割されたワイヤの片端を,各スライド可動部に設置した力センサに接続し,二つの力センサの出力が等しくなるように,スライド可動部を制御する.これにより,ワイヤの挿入力とスライド可動部の位置からワイヤの位置が計測可能となる.また,極細であるワイヤがスライドの移動により座屈をしない特徴的な構造を考案した.カテーテルに伸縮可能な二重構造金属パイプを接続し,外側パイプをステージ非可動部に固定し,内側パイプをスライド可動部上に設置した力センサの先端近くに固定した.このパイプを通してワイヤを力センサに接続している. 手技体験システムは,反力アクチュエータと補助アクチュエータで構成される.前者は,手技記録システムで使用したものと同じ構造であり,ワイヤの挿入力を提示するために力センサをフィードバックしてスライド可動部を駆動する.後者は,ワイヤの位置提示用で,記録されたワイヤの位置に合わせてスライドを駆動する.また,本システムの表示画面には,記録されたコイル挿入中の瘤画像がワイヤの位置に同期して表示される.
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