本研究では,誘電泳動および進行波電気浸透により,誘電特性(誘電率・導電率)の違いに基づいた血液中に存在する白血病細胞の分離および同定法の開発を行っている.本年度は,血液細胞(赤血球,白血球)の誘電特性の違いをもとに,研究代表者らが開発したBottle neck Fork-trace(BF)電極を用いて,チャンバー内に存在するすべての白血球の検出に成功し,その成果を国際学会(World Automation Congress 2012)で発表した.また,誘電泳動により正常な白血球と白血病細胞(前骨髄性白血病細胞,Bリンパ球性白血病細胞)の分離に成功した. 一方で,白血病細胞の高精度同定を行うためには,昨年度の成果により,高周波数帯域(50MHz~1GHz)で使用可能な誘電泳動用電極の設計および誘電泳動特性(誘電泳動力もしくはエレクトロローテーションによる回転数の周波数特性)の高周波測定が必要となったため,高周波用BF電極を設計し,その電極の電磁界シミュレーションによる特性評価を行った.シミュレーションにより,設計した高周波用BF電極の自己共振周波数は,約2GHzであるという結果を得た.これにより,高周波用BF電極を用いることで,白血病細胞の高周波数帯域における誘電泳動特性測定が可能であると考えられる.なお,この成果については,平成25年6月開催予定の電子情報通信学会マイクロ波研究会で報告予定である.
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