研究課題/領域番号 |
23800078
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研究機関 | 独立行政法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
上田 真也 独立行政法人国立循環器病研究センター, 研究企画調整室, 流動研究員 (40616926)
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キーワード | Remote Ischemic Preconditioning / 心臓自律神経 / 心臓マイクロダイアリシス法 / ノルエピネフリン / エピネフリン |
研究概要 |
【背景および目的】遠隔臓器で短時間の虚血-再灌流を繰り返すプロセス、すなわちRemote Ischemic Preconditioning(RIPC)は、心筋への虚血耐性を引き起こし、心筋保護作用を有する。このRIPCのメカニズムとして、自律神経系を介した心筋保護作用の関与が考えられているが、心臓の自律神経活動を直接計測した報告はまだ無い。本研究では、心臓自律神経活動をin vivoで経時的かつ定量的にモニターする心臓マイクロダイアリシス法を用いて、左室心筋間質ノルエピネフリン(NE)およびエピネフリン(Epi)を定量評価し、遠隔臓器の虚血が心臓自律神経活動に及ぼす影響について検討した。【方法】麻酔下ウサギ(2.3-2.9kg)において、左冠動脈回旋枝領域の心筋に心臓微量透析用ファイバーを刺入した。その後、RIPCとして総腸骨動脈を露出し、5分間の下肢虚血と5分間の灌流を4回繰り返した。RIPC終了後、左冠動脈を結紮し、90分間の心筋虚血を誘発した。なお、RIPCを行わないsham手術のみの結果と比較検討した。【結果】心筋虚血開始から30分までの心筋間質NEは、RIPC群がsham群に比べて、有意に抑制された。一方、心筋間質EpiはRIPC群とsham群との間に有意な差は認められなかった。【総括】RIPCは、心筋虚血早期における交感神経終末からのNE放出を抑制し、心筋保護作用を誘発している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在、本報告書の「9.研究実績の概要」に記した内容を学術論文として、国際誌に投稿する準備段階にあるため。
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今後の研究の推進方策 |
本報告書の「9.研究実績の概要」に記した通り、昨年度の研究結果から、RIPCは心筋虚血早期における交感神経終末からのNE放出を抑制し、心筋保護作用を誘発している可能性が示唆された。しかし、この心筋虚血早期におけるNE放出の抑制がRIPCによる心臓交感神経の機能変化によるものであるのかどうかについては明らかではない。したがって、今後はRIPCが心臓交感神経の機能に及ぼす影響について検討するため、RIPC中の左室心筋間質NEおよびEpiを定量評価するとともに、KCl(100mM)を局所投与し、心臓交感神経終末からのカテコラミン放出を誘発させた際の左室心筋間質NEおよびEpiを測定する。
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