最終年度である平成24年度は、国際学会での研究発表を3回、国内学会での研究発表を1回行った。スタートアップで研究対象とした、グルジアの南オセチア問題、アブハジア問題を前面に押し出した研究発表ではなかったが、学界でのいずれの発表も、それぞれの問題と大きく関わっている内容であった。2012年9月のコルカタ(インド連邦)で開催された、第4回東アジア・スラヴ=ユーラシア学会では、「Europeanization at the ‘grassroots’ level in Moldova: What are effective ways to deal with the Transnistrian conflict?」と題して、モルドヴァの沿ドニエストル紛争の解決策を論じた。沿ドニエストル問題は、アブハジア問題、南オセチア問題と並んで非承認国家問題に分類され、紛争の生成過程において多くの共通点を持つ。研究発表ではこの点に注目しつつ行った。コルカタ、プサンでの2回の国際学会では、当然のことながら、英語でディスカッションペーパーを作成し、口頭発表を行った。コルカタでの国際学会でのディスカッションペーパーは出版計画中である。2012年10月の名古屋で開催された国内学会、2012年度日本国際政治学会研究大会では、「民族的資源動員の中範囲理論:ソ連邦末期のモルドヴァ、グルジア、エストニア、リトアニアでの事例を中心に」と題して発表をした。ここでの発表は、少数民族が自治権を獲得、あるいは、拡大を要求して政治的集合行為を行ったケースを比較したものであった。この研究発表では、スタートアップでの研究期間中に、グルジアのフィールドワークで収集した資料を十分に活用することができた。国際政治学会で発表した内容と関連した論文は、査読付きの英文雑誌『Europe and Asia Studies』に掲載される。
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