研究課題/領域番号 |
23810005
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
卯田 宗平 東京大学, 日本・アジアに関する教育研究ネットワーク, 特任講師 (40605838)
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キーワード | 環境 / 人類学 / 中国 / 生業転換 / 近代化 |
研究概要 |
本研究の目的は、中国二大淡水湖である江西省?陽湖と湖南省洞庭湖の湖岸を対象に、(1)生活や生業の変化を明らかにし、(2)地域間比較の視点から個々の事例の同質性と異質性を導き出すものであった。平成23年度は、まず江西省?陽湖の漁村を対象にし、新中国成立前から集団化の時代、改革開放、そして現在に至る生業活動の歴史的変遷を現地調査によって明らかにした。特に調査では、改革開放から現在に至るまでの漁業組織の変化に注目した。その結果、'調査対象の漁村では、1990年代において漁業大隊と地方政府が中心となって漁村の漁業発展に積極的に寄与したことが分かった。しかしその後、2000年代以降になると、道路交通網等の拡充などにより外部の企業が河川や内湖の請負経営権を購入するケースが多くなった。その結果、長年続けられてきた鵜飼い漁や刺し網漁などの漁場が大きく減少していることも分かった。また、?陽湖の南部を撮影した衛星画像を解析し、最近10年間の?陽湖周辺の土地利用の変化、および4月-9月の豊水期と11月-3月の渇水期における?陽湖の湖水面積の違いを明らかにした。これまで、中国の内陸部とくに淡水湖とそこを生業の舞台とする漁師たちの生業の変化に関わる研究はほとんど行なわれてこなかった。平成23年度の調査により、まずは?陽湖における生業活動の時代的な変化が明らかになった。平成23年度の研究成果は、中国二大淡水湖のひとつである湖南省洞庭湖との事例比較や、ひいてはアジアの淡水湖との比較研究の基礎となるものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
カウンターパートの中央民族大学の教員および学生との交渉がうまくゆき現地調査が実施できたこと、また衛星画像解析の専門家から技術的な指導を受けて湖周辺の衛星画像の分析が順調に進んだことが理由に挙げられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度は江西省?陽湖のみの研究に終わった。平成24年度は湖南省洞庭湖で調査ができるよう、北京の中央民族大学や湖南省湖南師範大学等に働きかけを行なう予定である。
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