平成24年度は、平成23年度末までに得た、アンゴラ出自集団の移動と生業変化に関する資料の分析をすすめた。その成果の一部として、庇護国での生活が長期化した農村に住む難民が実践的に構築する生計維持をアフリカ農民の視点から論考し、熱帯生態学会をはじめ、国際シンポジウムおよび国内研究会で発表した。これにより、国内外でいまだ研究蓄積の薄い農村に住む難民の生計維持を具体的事例から提示し、その長期的変化の諸相について「下からの」平和構築へ資するものとして公表した。 また、紛争避難民に関する近年の移動と生業変化に関する補足資料を収集した。現在、ザンビアでは外資によるインフラ整備によって周辺国との経済流通が活性化しつつあり、2000年より調査を継続してきた農村における経済的側面への影響が大きい。分析をすすめたところ、住民の生計収支に関わる農産物販売や生活様式の多様化、資源利用範囲の広域化が顕著であった。そこで、収集した文献資料とあわせ、総合的に考察をすすめ、自主的定着難民によるケータイ利用とホスト/ゲストとの経済的関係の変化について、「自主的定着難民のケータイ利用」を執筆し刊行された。また、アフリカにおけるポスト・コンフリクト国の周辺地域にある農村の資源獲得とその利用プロセスに焦点をあてた投稿論文を執筆し、学術雑誌「」での査読を経て採録決定通知をえた。さらに、民主化と経済成長下での自主的定着難民によるミクロな経済活動に関する分析をすすめ、「ローカルマーケットで成功する-ザンビア西部州アンゴラ移住民の事例」と題した論考を執筆した。同論考は、『アフリカの経済成長と内発的発展』(大林稔・阪本久美子編)の第7章として平成25年9月に刊行される予定である。さらに、平成25年11月刊行予定の共編著「フィールドワークの衣食住」では、本科研の成果として自主的定着難民の移動と定住に関するエッセイを執筆した。
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