研究課題/領域番号 |
23810008
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
平野 恵子 一橋大学, 大学院・社会学研究科, 科学研究費技術員 (50615135)
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キーワード | 地域研究 / ジェンダー / インドネシア / マスキュリニティ / 移住労働 / ILO / サウジアラビア |
研究概要 |
本研究の3つの研究テーマのうち、2011年度は以下の2つに取り組んだ。 1)女性移住労働者の身体表象 2)都市部男性と農村部男性の階級的マスキュリニティ 上記二つのテーマに共通する、女性移住労働者身体への「ハラム」や「ドサ」といった穢れの表象について、都市部居住の男性や宗教・政治指導者にアンケート調査とインタビュー調査を、農村部において女性移住労働者の男性親族にアンケート調査を実施した。 女性単身での渡航は、都市部男性へのアンケート調査によれば、女性移住労働者自身そして男性家族双方の宗教的罪であると考えられていた。また移住労働者家族の経済状況の改善には政府による施策というよりも自己責任の問題として捉えられ、同時に男性性の欠如としてあらわされた。送出し地域であるチアンジュール県でも女性単身での渡航を穢れとする回答が多く見られた。この地域では、既婚女性単身での海外就労に対する宗教的批難の回避策として渡航前に離婚し帰国後に元夫と再婚するといった実践がみられ、女性移住労働者の身体に関する表象と婚姻実践が密接に関連している。 上記アンケート調査の暫定的な結果を国際ワークショップで報告し、特にインドネシアの地方自治化との関連性についての質問を受けた。 2011年度は、ILO第189号条約をはじめとして国際条約と国内の家事労働者法施行と連動させ批准を目指す社会運動が活発化し、またILO総会直後に発生したサウジアラビアでのインドネシア人家事労働者死刑を受けての同国への家事労働者送出し猶予といった、移住家事介護労働者やその世帯に対する政治的社会的関心が近年かつてないほどに高まる事象が相次いだ。以上の背景のもとで、これまで焦点とされてこなかった移住労働者家族の「男性性」に関する調査研究をおこなえたことは意義があった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
移住労働者家族の男性性に焦点を当てた調査は、インドネシア国内の移住労働を専門とするNGOや研究者から興味を持ってむかえられたが、当初の計画よりインタビュー調査が遅れていることから(3)とした。
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今後の研究の推進方策 |
2012年度は、本研究課題の3つのテーマのうち以下の二つに取り組む。 1.都市部男性と農村部男性の階級的マスキュリニティ:稼得者の地位から「降りた」女性移住労働者の男性配偶者は、都市部男性から宗教的に非男性として記号化され、侮蔑の眼差しを向けられている。この言説は農村男性にどのように捉えられているのか。農村部でのインタビューを中心に調査をおこなう。2.移住労働者世帯における子供:ケア役割を誰が担うのか、子供自身は言説上稼得者役割が逆転するように思われる両親に対しどのようなケアを期待しているのか、農村部でのインタビューと調査をおこなう。
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