研究概要 |
懸濁態粒子状有機物は,湖沼生態系においては生産のベースラインとして重要であるにも関わらず,その微生物分解に伴う同位体比の変動機構については統一的な知見は得られておらず,不明な点が多く残されている.本研究では,近年開発されたアミノ酸窒素安定同位体比の分析手法を導入し,分子レベルで窒素安定同位体比を解析することにより,微生物分解過程における同位体比の変動をもたらす要因(物質)の特定を試みるとともに,分解による同位体比変動が,湖沼深水層における窒素安定同位体比変動の説明要因として妥当であるかの検討を行う. 本年度は,アミノ酸の窒素安定同位体比分析プロトコルの検討ならびに野外観測と有機物分解実験を実施した. 1.アミノ酸の窒素安定同位体比分析プロトコルの検討 京都大学生態学研究センター所有のガスクロマトグラフGC-Ilsolink付き安定同位体比質量分析計の基本仕様で測定を行ったところ,期待する測定精度が得られなかったため,機械の改造・調整を行った.また,これと並行して,ガスクロマトグラフィーの昇温プログラムの検討を行った. 2.野外観測 琵琶湖沖帯の観測定点において,毎月,野外観測を行った.湖水は,6深度から採取した.得られたサンプルは,測定条件確定の後,分析に供する予定である. 3.有機物分解実験 秋(10月)と冬(2月)に湖水を採取し,有機物分解実験を行った.得られたサンプルは,測定条件確定の後,分析に供する予定である.
|
今後の研究の推進方策 |
本年度は,昨年度に引き続き,野外観測ならびに有機物分解実験を行い,得られたデータをもとに窒素安定同位体比の変動パターンを解析し,微生物分解過程における同位体比の変動をもたらす要因(物質)の特定を試みるとともに,分解による同位体比変動が,湖沼深水層における窒素安定同位体比変動の説明要因として妥当であるかの検討を行う. 野外観測並びに実験用採水は,引き続き琵琶湖北湖近江舞子沖の観測定点にて行う.有機物分解実験は,春(5~6月)・夏(8月)の計2回の実施を予定しており,野外観測は実験が終了するまで継続する. 野外観測ならびに有機物分解実験で得られたサンプルは測定条件決定後,速やかに分析に供し,得られたデータをもとに解析を行う.
|