懸濁態粒子状有機物は,湖沼生態系においては生産のベースラインとして重要であるにも関わらず,その微生物分解に伴う同位体比の変動機構については統一的な知見は得られておらず,不明な点が多く残されている.本研究では,近年開発されたアミノ酸窒素安定同位体比の分析手法を導入し,分子レベルで窒素安定同位体比を解析することにより,微生物分解過程における同位体比の変動をもたらす要因(物質)の特定を試みるとともに,分解による同位体比変動が,湖沼深水層における窒素安定同位体比変動の説明要因として妥当であるかの検討を試みた. 本年度は,有機物分解実験とサンプルの分析を実施した. 1. 有機物分解実験 春(6月),夏(8月),秋(10月)の3回,表層並びに深水層の湖水を採取し,暗条件下で有機物分解実験を行った(~3ヶ月). 2.サンプルの測定 高速液体クロマトグラフを用いて,野外観測ならびに有機物分解実験で得られた懸濁態有機物に含まれる各種アミノ酸の定量分析を行った.また,ガスクロマトグラフ・GC-IsoLink付き安定同位体比質量分析計を用いて,野外観測ならびに有機物分解実験で得られた懸濁態有機物に含まれる各種アミノ酸の窒素安定同位体比分析を行った. 本研究で得られた速報データは,2012年7月に大津で開かれた国際会議ASLO Summer Meetingで発表した.サンプルの分析が年度末までかかったため,総合的な解析はこれからとなる.
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