本研究は、ヒストンバリアントH2AZのアセチル化を介した損傷クロマチンにおけるダイナミクス制御を明らかとすることを目的としている。TAP54複合体の精製を行ったところ、TAP54複合体にはH2AZが含まれ、またTip60ヒストンアセチル化酵素を含まれていないのに関わらず、ヒストンアセチル化活性を有していることが明らかとなった。この結果からTAP54複合体にはTip60とは異なるヒストンアセチル化酵素が含まれ、またそのアセチル化酵素がH2AZをアセチル化することが予想された。これまでにTAP54複合体のマススペクトロメトリー解析によって、いくつかの新規アセチル化酵素を同定し、これら新規アセチル化酵素に関して、昨年度までに系の立ち上げを行った、Micro irradiation法、クロマチン免疫沈降法(ChIP)を用いて、新規アセチル化酵素がDNA損傷に集積し、損傷応答に関与することを明らかにしつつある。また、新規アセチル化酵素の精製を行い、In vitro HAT assayにより、H2AZのアセチル化を行うかどうかを検討中である。さらにTip60と新規アセチル化酵素の連携を解析するため、Tip60アセチル化変異体を発現した細胞で新規アセチル化酵素のChIPを行い、新規アセチル化酵素とTip60のDNA損傷領域のクロマチンへの結合におけるヒエラルキーについて現在解析を進めている。これらの実験により、DNA損傷応答におけるヒストンのアセチル化を介したクロマチン動態のメカニズムの新たな局面を解明することが可能になった。
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