研究課題/領域番号 |
23810018
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
佐川 徹 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 助教 (70613579)
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キーワード | 平和構築 / 多民族共生 / 低強度紛争 / 外部介入 / 武装解除 / 大規模開発 / 東アフリカ牧畜社会 / エチオピア |
研究概要 |
本研究の目的は、牧畜民族集団の間で武力紛争が頻発するケニアとエチオピアの国境地域において、政府や非政府組織らによって紛争を解決するためのいかなる介入がなされ、それが地域社会にどのような影響を与えているのかを明らかにすることである。 平成23年度に実施した現地調査では、地方政府が中心となって開催する3つの平和会合に参加する機会を得た。平和会合とは、対立する集団の成員を一か所に集めて、紛争の原因や平和の重要性を議論させることをとおして、対立関係の緩和をもたらすことを目的とした会合である。会合の場では、介入者側が「伝統的儀礼の再現」に腐心していたが、現地の人びとは必ずしもこれに積極的に参加していなかった。この地域では、紛争終結後に必ずこの儀礼がおこなわれてきたわけではなく、集団境界を越えて個人的な友好関係をもつ成員同士が相互往来を再開することを契機に、平和的な関係が回復されることが多かった。そのため、人びとは儀礼に対してあまりつよい価値を置いていない。介入者側が「平和構築に資する地域の伝統」として期待した儀礼の再現に、人びとが積極的に関与しなかった背景には、以上のような要因があった。儀礼に多大な時間が割かれた結果、人びとがたがいに議論する時間が短くなったことは、会合全体にとってマイナスであった。 以上のように、平成23年度の研究内容からは、外部アクターが地域社会に介入する上で、現地の慣習に対する十分な知識を有していなかったために、適切な効力を有した介入ができていない実態が明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度には、当初の研究計画にしたがって海外渡航をおこない、エチオピアでの現地調査に従事することで、外部アクターが地域社会に介入している実際の現場で、有用な情報を集めることができた。また、カナダで開催されたアメリカ人類学会での口頭発表をおこない、多様な聴衆からの指摘を受けることで、研究を進めていくうえでの視野を拡大することができた。学術図書への論文執筆もおこない、本科研に関連した成果の公開を進めた。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度には、再度海外渡航をおこない現地調査に従事することで、前年度に集めた情報を補足するためのデータ収集につとめる。また国内では、関連学会や研究会での発表を重ねて分析の視野を広げるとともに、関連文献の収集と熟読をとおして問題意識の尖鋭化をはかりながら、論文執筆をおこなっていく。また、市民向け公開講座での発表や、所属する研究機関のホームページをとおして、研究成果の公開を積極的に進めていく予定である。
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