研究課題/領域番号 |
23810019
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
長岡 慎介 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 准教授 (20611198)
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キーワード | イスラーム金融 / イスラーム経済論 / イスラーム法 / 地域研究 / 地域間比較 |
研究概要 |
研究プロジェクト1年目である本年度は、下記の2点について研究を行った。 (1)イスラーム金融の最新動向の調査と調査対象国のイスラーム金融の国際的プレゼンスについてのデータ収集 本研究が対象とする3カ国(ヨルダン、インドネシア、イギリス)のイスラーム金融の規模と国際的プレゼンスを理解するために、英語・アラビア語文献の収集を精力的に行った。また、2011年12月には、世界各国のイスラーム金融統計・データの収集を精力的に行らているイスラーム金融機関一般評議会(通称CIBAFI:本部、バハレーンのマナーマ)に赴き、研究に必要な統計・データを収集した。また、次年度開催予定であったハーバード大学における国際学会(ハーバード・イスラーム金融フォーラム)が2012年3月に繰り上げられたため、本年度予定していたインドネシアでのフィールドワークに代えて、同学会に出席し、イスラーム金融の最新動向に関する情報収集を行った。これらの収集したデータ・情報・文献の解析を踏まえて、イスラーム金融の理論と実践の現状を歴史的視野からの検討を行った。その成果については、2011年12月にカタルで開催された第8回イスラーム経済学国際学会、2012年2月に京都大学で開催された国際ワークショップで発表を行うとともに、国内学術誌『アジア・アフリカ地域研究』(11巻2号)に英語論文として公表した。 (2)ヨルダン、トルコにおけるフィールドワーク 本研究が調査対象としている3カ国のうち、本年度はヨルダンを訪れ、フィールドワークを行った。フィールドワークでは、ヨルダンの主要イスラーム銀行2行および首都アンマン市内の専門書店を訪れ、資料調査、聞き取り調査を行った。調査からは、ヨルダンのイスラーム金融は、実践(商品のラインナップ、資金)および理論(イスラーム法解釈、法学者ネットワーク)の双方において、イスラーム金融のハブである中東湾岸地域の影響を大きく受けていることが判明した。その中での興味深い知見は、同国のイスラーム金融の実践と理論が、ヨルダンの需要に応じてカスタマイズされているのではなく、中東湾岸地域が推し進めているイスラーム金融の標準化志向に(同地域以上に)沿った形で展開されていることが明らかになった。また、別資金で渡航する機会を得たトルコにおいても、ヨルダンと同じように近年イスラーム金融が急成長していることから、急遽、調査対象国に加えることにし、同様の調査を実施した。同国での調査では、国内の主要イスラーム銀行での調査を行うとともに、イスラーム金融に関するトルコ語文献・資料が膨大に存在していることが判明したため、これらの文献の収集を精力的に行った。以上、2カ国のフィールドワークおよび分析の成果については、2012年1月に開催された国際セミナーにて成果構想を発表し、具体的な成果を2012年7月に英国ケンブリッジ大学で開催される国際会議にて公表予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年目の研究計画において実施予定であったデータ収集、および現地でのフィールドワークはおおむね計画通りに実施できた。当初は、ヨルダン、イギリス、インドネシアの3カ国を対象として比較研究を行う予定であったが、トルコについてもこれらの国とイスラーム金融の発展段階が同様であることが判明したため、調査対象国に加えることにした。これにより、より深みのある研究が可能になった。成果の公表についても、順調に公表、公表準備が進められている。とりわけ、国際学会への発信(英語論文執筆、国外の会議での発表)をする機会を多く得ることができたのは今年度の特筆すべき成果である
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今後の研究の推進方策 |
次年度も、当初の計画通りフィールドワークを踏まえた分析を行っていく。また、国際学会への発信も引き続き積極的に行うために、英語論文の執筆、国外の会議での発表に力を注ぐことにする。地域間比較を軸とした最終成果のまとめについても、次年度下半期から取り組むことにし、年度内あるいは2012年度上半期までの成果公表をめざすことにしたい。
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