好酸性鉄還元細菌である、Acidiphilum sp.およびAcidocella sp.に属する2株を用いて、レアメタルの一つであるクロムを回収することを試みた。産業排液中などの水圏で、クロムは主にCr^<6+>またはCr^<3+>として存在する。Cr^<6+>(クロム酸;CrO_4^<2->および二クロム酸;Cr_2O_7^<2->)は可溶性で強い毒性を示す。一方、Cr^<3+>は生体への毒性は低く、中性pHでは不溶性の水酸化物を生成しやすい。本菌株について、まずCr^<6+>への耐性試験を行った。Cr^<6+>濃度が1ppm程度では、全く生育阻害は見られなかった。1ppmのCr^<6+>存在下で本菌株を培養したどころ、溶液中の全クロム濃度には変化が見られなかった。これらの菌株の細胞表面電荷について、ゼータポテンシャル測定を行ったところ、酸性pH領域においてもマイナスにチャージしていた。したがって、オキシアニオンとして存在するCr^<6+>が単純な静電的吸着で細胞表面またはEPS表面に吸着することは、やはり起きていないようである。ところが、Cr^<6+>濃度を測定してみたところ、培養開始と共に濃度が低下し、培養開始後300日で、Cr^<6+>は検出されなかった。したがって、これらの菌株によって、Cr^<6+>の単純なバイオソープションは起こっていないが、微生物学的反応によって、Cr^<6+>がCr^<3+>に効率的に還元されているごとが分かった。Cr^<3+>は中性pHでは不溶性の水酸化物を生成しやすいため、微生物還元後の溶液を中和することで、不動化することが可能であると思われる。化学的手法としては、Cr^<6+>の還元には亜硫酸水素ナトリウムなどが用いられている。これらの化学的処理に代わる低環埠負荷かつ経済的な代替手段として、好酸性鉄還元細菌のクロム回収・リサイクルプロセスへの有効性を示す初期実験成果が得られた。
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