研究課題
近年、人々の健康及び疾病に対する関心が多岐に亘り、殊に医薬品等に対する安心・安全の志向が高まっている。それに伴い漢方処方の適用拡大が進み、薬用植物の需要が急激に増えている。近年、植物細胞において脂質ラフトの存在が示唆されているものの、現在までにその形成機構の解明に至って無い。そこで当該研究では、植物の脂質ラフトの形成機構を種々の界面科学的手法を用いて解明し、植物脂質ラフトモデルを構築することを目的とする。更にそのラフトモデルを用いて二次代謝産物サポニンの存在意義等についても検討する。植物脂質ラフトは、種々の植物ステロールとスフィンゴ脂質に富んでおり、その形成には、構成脂質の分子構造的特性が深く関与すると考えられている。そこで、先ず、平成23年度は、脂質ラフト構成脂質の形成機構を見極めることを目的とし、スフィンゴ脂質、リン脂質、コレステロールの3成分系混合膜を用いてラフトモデルを構築した。スフィンゴ脂質の代表としてパルミトイルスフィンゴミエリン(PSM)、リン脂質の代表としてジオレオイルフォスファチジルコリン(DOPC)そして、ステロールの代表としてコレステロール(CHOL)を用いた。表面圧測定(π-A)、表面電位測定(ΔV-A)、及び形態変化観察(BAM、FM画像)により系統的に解析を行った結果、用いた3成分は、モル分率が1:1:1で熱力学的に安定であることが示唆された。そこで、平成24年度は、このモデルを用いて、生薬甘草に含有するグリチルリチン(GC)とラプトモデルとの相互作用をLangmuir単分子膜手法により分子レベルで精査する。前年度は、オープンカラムクロマトグラフィーにより純度の高いGC(>98%)の大量精製(30g)にも成功しており、本研究を遂行する材料は揃っている。前年度構築した脂質ラフトモデルとGCとの相互作用の解明は、植物内における二次代謝産物、特にサポニンの存在機構や輸送機構の手掛かりとなる。
2: おおむね順調に進展している
平成23年度は、脂質ラGCト構成脂質の形成機構を見極めることを目的とし、スフィンゴ脂質、リン脂質、コレステロールの3成分系混合膜を用いてラフトモデルを構築した。本脂質ラフトモデルの構築において植物脂質ラフトの形成機構に関する知見を得ることが出来たため。
前年度の研究より、スフィンゴ脂質として用いたスフィンゴミエリンは、リン脂質のDOPCよりむしろコレステロールと好意的に相互作用をすることが判明した。また、スフィンゴミエリン、DOPC、コレステロールの存在比は、等量が熱力学的に安定であることが判明した。そこで、本年度は、各種界面科学的手法を駆使し、構築したラフトモデルとGCの相互作用を分子レベルで体系的に精査する。サポニンは構造内にコレステロール骨格と類似骨格を有するため、サポニンのGCは、コレステロールと相互作用することが予想される。また、植物ラフト構成脂質として、カンペステロール、スティグマステロール、ブラジカステロールを用いて植物脂質ラフトの形成機構に関する更なる知見を得る。
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