大名家の視点から徳川政権による大名編成秩序を政治史的に解明するという本研究の課題にもとづき、本年度は、昨年度に引き続いて関係する大名家史料の収集を行うとともに、研究成果をまとめてその一部分を論文等により発表した。 幕府関係の基本刊行史料や徳島藩蜂須賀家・会津藩保科家他の刊行史料を購入すると共に、国文学研究資料館(東京都立川市)、土佐山内家宝物史料館(高知県高知市)、国立公文書館(東京都千代田区)において史料調査を行い、関係史料を閲覧・撮影した。その際、形成過程に注目して大名編成秩序を考察するという本研究の課題に応じ、特に近世前期の家光政権期~家綱政権期を対象として史料収集を行った。 そして、収集した史料の整理・分析を行うことにより、家光・家綱政権による大名編成について、特に一万石以上が大名として編成されていく過程を一定程度解明し、その成果の一部を学会報告した(福島大学史学会2012年度大会講演「家光・家綱政権と諸大名」)。また、大名分類の一つである譜代大名について、寛永19年以前は江戸在府が原則であったとされる従来の通説を批判し、むしろ在国が基本であったことを一次史料を用いて実証し、論考として発表した(「譜代大名考」『企画展 徳川四天王本多忠勝と子孫たち―岡崎藩主への軌跡―』岡崎市美術博物館、2012年)。さらに、個別大名分析として徳島藩蜂須賀家を事例として近世中期の相続事情を考察し、大名家の自己認識の形成過程とその意義について解明し、論文発表した(「「御家」の継承―近世大名蜂須賀家の相続事情」『歴史評論』754、2013年)。 以上により、大名編成の時期的変遷をさらに具体的に解明するという課題は残されたものの、本研究の目的は概ね達成できた。
|