研究課題
情動の問題にかんしてフロイトの著作とデリダによるフロイト読解を研究した。フロイトにおける「痛み」の問題を考察した。1880年代のコカインの鎮痛作用の研究とヒステリー性疼痛の研究、「心理学草案」(1895年)、『快原理の彼岸』(1920年)、『制止、症状、不安』(1925年)をとくに検討した。「痛み」を心的かつ身体的な問題として定式化しようとするフロイトの努力が最終的に「準メタ心理学的」と呼びうる「痛み」の表象の錬成に通じたことと、その錬成において「痛み」の問題(ひいては不快な諸情動の問題)とトラウマの問題が連接されたことを明らかにした。研究成果をまとめ、論文をフランス語で執筆し発表した。フロイトにおける「不安」の問題の所在を考察した。『夢解釈』(1900年)と『制止、症状、不安』をとくに取り上げた。フロイトの生物学的な言葉遣いに注目しながら、彼がいう「去勢不安」と彼の概念装置のなかでそれがもつ特権的な重要性を再検討した。再検討を通じて、この特権性が「去勢コンプレクス」理論のみによるのではなく、この理論と「エディプス・コンプレクス」理論の分節に相関してもいることを明らかにした。『夢解釈』から「精神分析概説」までの著作のなかでこの分節の条件を追究する論文を日本語で現在作成中。デリダのフロイト読解を「情動」の問いとの関連で考察した口頭発表の要旨を発表した。「フロイトとエクリチュールの舞台」(1966年)から2001年の対談集にいたるまでのいくつかのテクストをとりあげた。彼の読解について、局所論の再開発、破壊欲動の再評価、書き手としてのフロイトへの注目という3つの軸を指摘した。その上で、彼の読解が、メタ心理学を完成させることの困難さという問題を掘り下げる作業を通じて、他者論における「情動」の問いの射程を主張する命題を練り上げるにいたったことを論じた。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Future of Bioethics: International Dialogues from the GABEX conference (ed. Akira Akabayashi)
巻: Oxford University Press ページ: 未定
Jouissance et souffrance (ed. Marcus Coelen, Claire Nioche, Beatriz Santos)
巻: Campagne Premiere ページ: 69-81
フランス哲学・思想研究
巻: 17 ページ: 93