本研究は、ポール・ゴーガン(1848‐1903)のフランスにおける受容を、美術館におけるコレクション形成史の観点から検証するものである。具体的には、美術館委員会の議事録などの一次資料を参照した上で、美術史の同時代的なコンテクストに焦点を当てながら、芸術家受容において美術館が果たした役割を分析した。フランス各地の美術館に所蔵されたゴーガン作品を調査した結果、コレクターの寄贈や遺贈によってもたらされた作品が大半であるのに対し、購入によって収蔵された作品は僅かで、その経緯をめぐる更なる調査が必要であることが確認された。美術館は歴史を映し出す鏡であるだけでなく、歴史的な変化を促す装置でもあり、そこには様々な要因が絡み合っている。本研究を通して、ゴーガンの芸術家受容とコレクション形成史の密接な繋がりを示すことができた。
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