研究課題/領域番号 |
23820020
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研究機関 | 東京芸術大学 |
研究代表者 |
成田 麗奈 東京芸術大学, 音楽学部, 助手 (30610282)
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キーワード | 1920年代 / 前衛音楽 / フランス音楽 / 音楽批評 |
研究概要 |
当該年度は調査に先立ち、1920年にパリで結成され前衛を呼び物としたバレエ・スエドワにおける六人組作品に焦点を当て、博士論文の成果をふまえて紀要論文を執筆した。1920年代当時の批評誌における評価軸としては、前衛性および革新性、新しさが注目を集めており、前衛的な作曲技法としては、具体的には多調性が議論の的となっていた。こうした前衛音楽家としてのイメージは、必ずしも肯定的なものではなかった。しかし、否定的な評価をされることは必ずしもデメリットではなく、若手作曲家にとっては、批評誌において無難に扱われることよりも、多少の議論を引き起こしても注目を集めることのほうが、芸術家としての名声を獲得していくうえで有利なことであったともいえる。本論文によって、前衛音楽の表象をより立体的に浮かび上がらせるため、「前衛」という言葉のみを拾い出すだけではなく、「革新」「進歩」「新しさ」といったその他のキーワードも含めて関連記事を収集する方針も定まった。 論文執筆の過程で、1920年代フランスの音楽批評において、前衛をめぐる議論の中心となった人物としてエミール・ヴュイエルモーズの重要性が浮かび上がった。それゆえ、2013年2月パリにおける資料調査では、マーラー音楽資料館所蔵のFond Vuillermoz所収の資料を調査し、ヴュイエルモーズの音楽批評記事を収集した。同時にシャルル・ケックラン、ポリス・ド・シュレゼールら、他の音楽批評家の批評記事も調査した。これらの調査から、1920年代フランスにおける「前衛音楽」をめぐる言説の背景には同時代のドイツ・オーストリアの音楽批評との関係、第一次世界大戦以前のフランスにおける音楽批評との関連性について考察する必要があると判断された。それゆえ、次年度は1930年代以降という当初の計画を変更し、1910年代における音楽批評について調査の範囲を広げつつ、1920年代における「前衛音楽」をめぐる言説をより詳細に調査し考察を深めたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画はおおむね順調に進展している。ただし開館日等の都合から2012年2月の渡航調査ではマーラー音楽資料館所蔵の資料調査を優先させたため、フランス国立図書館での資料調査は次年度に重点的に行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策としては、1920年代における「前衛音楽」の表象が1930年代にどう評価されたかを調査する方針から、1910年代に見られた「前衛音楽」観と1920年代の「前衛音楽」観の関連性の調査へと方針を転換する。また、1910年代から1920年代にかけて、同時代のドイツ・オーストリアにおける「前衛音楽」をめぐる音楽批評、音楽批評家とどう関連しているかについても調査・考察する予定である。
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