研究課題
1. 本研究課題にて扱う3種のパンチャラートラ派の文献(Svayambhuvapancaratra, Astadasavidhana, Devamrtapancaratra)は、当該研究者がカトマンドゥの国立図書館にて、11~12世紀の貝葉写本を発見したもので、これまでまったく知られていない作品である。本研究課題に取り組む前にこれらの写本の校合は一通り行っていたので、この初年度には写本の電子化画像に基づきすべての文献を校訂し、他文献におけるパラレルなども含めたCritical Appartusを含む批判校訂版の初稿を作成した。このCritical Apparatusは3つの層に分かれており、最下層に写本の異読を記録し、中央層には他の文献とのパラレル、最上層にはこれらの文献に使用されているヴェーダのマントラを記録する。また、校訂上の諸問題を扱う註釈の作成を開始した。2. Devamrtapancaratraについては、写本が不完全で書写年代が不明であるため、字体上類似し、かつ書写年代が記されている写本と比較し、おおよその書写年代を確立した。3. 2012年1月には、第15回国際サンスクリット学会(デリー)においてこれらの文献に関して二つの研究発表を行った。4. 本研究はMadhav Sharan Upadhyaya教授(ネパール・サンスクリット大学)とRaju Rimal氏(国立図書館図書館員)の協力を得て行われているが、先方の諸事情で初年度はカトマンドゥでの共同研究・調査を行うことができなかったため、その資金を繰り越して第2年次にカトマンドゥのヴィシュヌ教寺院の共同調査、および前述の文献に関する意見交換を行った。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画通り、本研究で校訂研究を予定している3つのパンチャラートラ派の文献すべてについて、一通りの校訂を終了し初稿を作成した。またカトマンドゥにおけるヴィシュヌ教寺院の調査はそのための予算を第2年次に繰り越して、予定通りの調査を行った。
当初の計画通り、2年目には校訂テキストの初稿を原写本の調査などに基づき改訂し、完成稿を作成すると同時に、校訂テキストに対する詳細な註釈、内容梗概を作成する。また3つの文献の相互関係、パーシュパタ文献、初期シヴァ教タントラ文献との関係を考察したうえで、その成果を序章としてまとめる。
すべて 2012 2011
すべて 雑誌論文 (2件) 学会発表 (2件)
Samskrtasadhuta: Studies in Honour of Professor Ashok N. Aklujkar. Eds. C. Watanabe, M. Desmarais & Y. Honda. New Delhi: D.K. Printworld.
巻: vol ページ: pp. 1–28.
Brill's Encyclopedia of Hinduism.
巻: Volume III. ページ: pp. 458-466.