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2011 年度 実績報告書

古代地中海世界における国家間ネットワーク

研究課題

研究課題/領域番号 23820029
研究機関大阪大学

研究代表者

中尾 恭三  大阪大学, 文学研究科, 招へい研究員 (10613979)

キーワード国家間ネットワーク / 不可侵条約 / ヘレニズム時代 / ポリス / マグネシア / コス / 互恵関係 / 人的紐帯
研究概要

ヘレニズム時代のギリシア人ポリスであったマグネシアとコス島における、アシュリア(不可侵)条約に関わる史料を検討し、国家間が交渉を行う際のレトリックと条約締結によって生み出された国家間ネットワークの分析をおこなった。とりわけ、前208年に諸国がマグネシアにたいして認めたアシュリアと祝祭のパンヘレニズム化について検討を行い、国家間の交渉が既存の文化的基盤を活用するかたちで勧められたこと、大規模な祝祭創設が人びとの交流を新たに形成し促進する効果をもっていたこと、外交使節として派遣されたポリスのエリートが将来にわたって国家間の紐帯を維持していく要となっていったこと、以上の3点を論証した。アシュリア条約とそれに関わる国家間交渉は、古代地中海世界において国家を超えた人的紐帯を生み出していこうとするギリシア人たちの試みの1つであり、国際法が存在しなかった時代において国家の安全保障を模索していく過程の1つでもあった。この成果は、『パブリック・ヒストリー』第9号の特集「社会秩序と互酬性」に論文として寄稿した。
さらに前242年のコス島におけるアシュリアを検討するため、ロンドンのSenateHouseを訪問し、資料調査を行った。その結果として、前240年代、デルフォイの神域で創設された汎ギリシア的祝祭のソテリア祭、スミュルナへの不可侵、コスのアスクレビオス神殿の不可侵と祝祭の汎ギリシア化が相互に連関した現象であったと仮説を立てるにいたった。目下のところ、その仮説を論証するために史料の分析をおこない、論考として発表する準備をおこなっている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

購入予定であった史料の一部がオンデマンド書籍であったため昨年度中に手に入らず、当初の研究計画予定を組み替え、24年度前半から開始予定であったケーススタディを昨年度にとりおこなった。予定としていた期間内に2つの都市国家に関わる不可侵条約の分析を終え、マグネシアの不可侵条約と国家間関係について論文を公刊したため、おおむね順調に進展していると評価を下した。

今後の研究の推進方策

出版社の都合により史料の入手が円滑に進まなかったこともあり、当初予定していた研究の順序を組み替えている。そのため、本年度は昨年度に進めた研究をさらに進展させるかたわら、古代世界における国家間ネットワークの可視化に努める。その上で、3つのギリシア人都市国家コス、マグネシア、テオスにおけるアシュリア条約と、その交渉から浮かび上がってくる古代世界における国家を超えた人的紐帯の形成と維持を論じていく。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2012

すべて 雑誌論文 (1件)

  • [雑誌論文] マグネシアのアシュリアと国家間関係2012

    • 著者名/発表者名
      中尾恭三
    • 雑誌名

      パブリック・ヒストリー

      巻: 9号 ページ: 15-28

URL: 

公開日: 2013-06-26  

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