研究課題/領域番号 |
23820031
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研究機関 | 奈良女子大学 |
研究代表者 |
磯部 敦 奈良女子大学, 文学部, 准教授 (00611097)
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キーワード | 書籍文化 / 新聞史 / 山梨県:群馬県 / 活版印刷 / 出版史 / 書誌 |
研究概要 |
(1)山梨県について、平成23年度は県立図書館と県立歴史博物館の調査を予定していたが、県立図書館の移転(平成24年度中)にともなう長期休館が予告されていたため、同館に特化して行政文書の調査をおこなった。その結果、 a)従来、山梨県の新聞は明治5年刊の『峡中新聞』に始まるとされてきたが、それ以前に『峡中新誌』の刊行を企てていた行政文書を発見したこと。 b)『峡中新誌』発刊に郡内の村役人らが関与しており、実際に刊行するにあたって甲府の本屋内藤伝右衛門に助力を仰ぎ、『峡中新聞』と紙名変更して刊行したと推察されること。 c)その内藤伝右衛門は明治8年の出版条例以降、積極的に版権登録を県に願い出ており、内藤の営為の根底に「権利の確保」があることを行政文書より裏付けられること。 が明らかとなった。 (2)群馬県について、平成23年度は国文学研究資料館所蔵の群馬県庁文書を調査した。同文書には本研究がフィールドにしている明治初期の行政文書が豊富に収められているが、これまで調査されてこなかった文書群である。そこでまず、実際にどのような文書が簿冊のなかに綴じられているのかを確認すべく(これは目録からは分からない)、調査をおこなった。 (3)長野県について、平成23年度は松本の本屋高美甚左衛門の刊行物を中心に購入した。高美は、江戸時代から続く老舗の本屋で、明治初期には教科書出版や新聞、活版印刷導入に関与していた。この本屋の動向をモデルとして長野県の事例を考察すべく、高美出版物の書誌調査をおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
山梨県立図書館所蔵の行政文書のうち、明治一桁代の簿冊は調査が完了するなど、文書調査じたいは順調に進んでいるが、平成23年度はその成果を論文にして公表することができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
(1)山梨県立図書館所蔵の行政文書調査の成果をふまえた論文の作成・公開。 (2)山梨県立歴史博物館所蔵の私家文書、および『峡中新聞』『甲府新聞』の調査。 (3)長野県立歴史館における明治一桁代の文書調査の実施と完了。 (4)国文学研究資料館所蔵群馬県庁文書の調査継続と完了。
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