本研究は、1989年の体制転換、2004年のEU加盟を経たスロヴァキア共和国に注目し、村落地域であっても、政治的方針の変容に地域社会が直面せざるを得ない現場における公共性のあり方を明らかにすることを目的としている。具体的にはスロヴァキアの地域社会における「自治」の場にかかわるアソシエーションやNGOの連携のありかた、および「自治」について異なる論理の交渉や接合に注目した。 上記の研究課題に取り組むにあたって、本年度は昨年度に引き続き、現地でのフィールドワークと資料収集を9月と3月に行い、そこで集めたデータをもとに研究を進めることができた。昨年度が村落部中心の調査であったのに対し、本年度は新たに中部スロヴァキアの地方小都市の調査を精力的に進めることができたの大きな収穫である。本研究は現地のアソシエーションやNGOの活動状況を把握することのみを目的とするのではなく、それがポスト社会主義的状況における「自治」とどのように結びついているかを考察することが最終的な目的である。したがって、フィールドワークから得られる情報を微細に分析するだけでは不十分であり、スロヴァキアにおける体制転換以降の民主主義、市民社会の発展の状況を参照しつつ研究をすすめることを心掛けた。ただし、それでは研究の視点が広範囲になるため、今年度は学会や研究会等で積極的に報告を行い、さまざまな分野の聴衆からコメントを頂くことで、適切に研究の焦点を絞ることを心掛けた。 すべてのフィールドワークを終えたのは3月であるが、途中の段階でもできるだけ研究成果を査読のない論文として素早く公表したりすることに努めた。最終的な研究成果は平成25年度中には論文としてまとめる予定である。
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