本研究は、東北地方に注目し、中近世移行期(戦国時代~江戸時代)における村落の実態を考察した上で、大名の滅亡・改易時に注目して、村と大名権力の関係性について明らかにすることを目的とする。 本年度はまず、前年度に引き続き、本研究に必要な関連史料と文献を収集し、データベース化して整理・分析する作業を行った。東北地方の自治体史(史料編)のほか、中近世移行期の東北地方のことを伝える、近世に作成された軍記物語についても主要なものは収集し、未翻刻の場合は翻刻を行った。これらのうち一部の史料については、必要に応じて史料の原本を閲覧・撮影する調査を実施し、分析を進めることができた。 次に、これまでの作業や調査の成果を踏まえて、文禄3年(1594)に伊達領国で起きた一揆について分析し、論文として発表することができた(「文禄三年の伊達領『金山一揆』―葛西氏の滅亡と地域社会―」池享・遠藤編『産金村落と奥州の地域社会―近世前期の仙台領を中心に―』岩田書院、2012年)。同地域は、鎌倉時代以来、葛西氏の支配がおよぶ地域であったが、天正18年(1590)に葛西氏は豊臣政権によって滅亡する。その後、伊達領国となるが金山支配を豊臣政権が支配を行うことになった段階で、一揆が生じたものと考えられる。それらの意義を検討し、葛西氏の滅亡に伴う戦争と金山支配者の入れ替わりが、一揆が生じた要因と深く関わることを明らかにしたものである。 このように、本年度は研究のための基礎作業を続けるとともに、論文によって研究成果を公表することができた。また、東日本大震災の被災地域については、史料所蔵者や史料の被災状況についても確認することができた。
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