研究課題/領域番号 |
23820059
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
久保田 慎二 早稲田大学, 文学学術院, 助手 (00609901)
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キーワード | 太行山脈東側 / 内蒙古自治区中南部 / 土器編年 / 阿善三期文化 / 老虎山文化 / 永興店文化 |
研究概要 |
本年度は、主に内蒙古自治区中南部の土器データベースを構築し、さらに土器編年を作成した。また、併せて河北省、北京市の土器データベースの構築を行い、土器編年を作成する過程で現地調査に赴いた。 土器の型式分類を行い、形式間における各型式の共伴関係から内蒙古自治区中南部の土器編年を作成し、主に様式の変化から時期区分を行うと、当該地区は大きく5期に区分することができた。その結果、特に研究史上で見解の相違がみられたいわゆる阿善三期文化、老虎山文化、永興店文化の併行関係について、阿善三期文化と永興店文化は前後関係にあるが、その両文化に跨るように老虎山文化が位置づけられることが分かった。また、5期は1~3期、4期、5期とまとめることができ、それぞれ他地域からの影響で地域文化を形成する段階から、次第に独自な文化を形成し、最終的に外部への影響力を持つ文化へと変化することが分かった。 また、当初の計画では本年度に内蒙古自治区中南部の現地調査を行う予定だったが、冬季に調査を行うことは困難という情報を得たため、上記編年の確認のための現地調査を来年度に回し、本年度は太行山脈東側の河北省と北京市で現地踏査と土器実見を行った。 河北省と北京市で見られる新石器時代の土器データベースは本年度で大方終わらせることができた。その情報を元にあらかじめ重要になる土器を選定し、その確認作業を行うために土器の実見に赴いた。土器の色調や形態、あるいは現地研究者との意見交換を通して新たな情報を得たため、来年度はその情報を元に太行山脈東側の土器編年を作成する。 本年度は、多少の計画変更はあったものの、内蒙古自治区中南部の土器編年の作成、河北省、北京市の土器データベースの作成と実見調査を遂行することができ、太行山脈北側および東側の土器の様相をかなり明らかにすることができたと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初は23年度に内蒙古中南部、24年度に河北、北京を対象とし、それぞれデータベースの構築、編年の作成、現地調査という順で研究を進める計画であった。ただ、本年度の内蒙古中南部の調査が難しく、その時間を河北と北京での調査に費やした。作業段階の逆転はあったが、土器編年を作成した後に修正のため調査を行うか、先に現地調査で確実な情報を得て編年を作成するかの違いなので、大きな問題ではなくおおむね順調といえる。
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今後の研究の推進方策 |
既述した通り、本研究は当初は23年度に内蒙古中南部、24年度に河北、北京を対象とし、データベースの構築、編年の作成、現地調査という順で研究を進めている。その中で、23年度は内蒙古中南部の現地調査と河北、北京の現地調査が本年度は入れ替わった。したがって、まず24年度は内蒙古中南部の現地調査を行い内蒙古中南部の土器編年を確定する。それから河北、北京で行った現地調査の情報を活かし、土器編年を作成する。併せて環太行山脈地区の地理情報を整理し、現地踏査を行いたい。上記作業を行い、10月以降は土器の地域的な分布図を作成し、具体的な地域間交流を描く。そして1月以降は内蒙古中南部、河北、北京に以前分析した山西省を加え、環太行山脈地区の広域編年を構築し、地理的情報を加味して地域間交流の具体像を解明する。
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