1、板木デジタルアーカイブ構築 当年度は、昨年度に引き続き、(1)株式会社法蔵館、(2)株式会社芸艸堂の所蔵板木について、デジタルアーカイブ構築(クリーニング・デジタル撮影・画像処理・メタデータ構築)を行い、拡充を進めた。結果、当年度は(1)約12000カット、(2)約10000カットのデジタル化を完了した。これらを申請者が構築するwebデータベース「板木閲覧システム」に登録し、書誌情報の蓄積を行って「板木書誌学」の構築を継続的に進めた。加えて、京都大学大学院文学研究科国語国文学研究室との共同により、京都大学附属図書館所蔵の板木についてもデジタルアーカイブ構築を実施し、3800カットのデジタル化を完了した。また同時に、板木に対応する板本の調査・収集を行い、それらのデジタルアーカイブ構築を行った。これらは、立命館大学アート・リサーチセンターが運営する「書籍閲覧システム」に登録した上で、板木閲覧システムと連動させ、公開を進めた。 2、出版記録の読解とデータベース構築による、近世出版における板木の役割考察 当年度は、昨年度構築したプロトタイプをブラッシュアップしつつ、当年度は特に、現存板木に対応する蔵板記録『蔵板記』『蔵板仕入簿』『蔵板員数』『蔵板員数帳』『板木分配帳』『文政堂蔵板目録』についてのメタデータ構築を進めた上で、出版記録データベースの構築を進めた。また出版記録データベースを板木デジタルアーカイブと連動させるスキームを、「板木閲覧システム」の非公開版に実装した。これにより、1に述べた点と合わせ、板木・板本・出版記録の3つの連動を実現した。 3、著書 1および2の活動を通じて論文執筆・口頭発表を進めたが、特に当年度は申請者が提唱した「板木書誌学」を確立させるため、板木を主題とする著書『近世出版の板木研究』の執筆に注力し、2月に公刊を行った。
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