研究課題/領域番号 |
23820073
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研究機関 | 大阪芸術大学 |
研究代表者 |
出口 実紀 大阪芸術大学, 人文社会系研究科, 助手 (00612871)
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キーワード | 新撰楽道類聚大全 / 岡昌名 / 天王寺方 / 楽書 |
研究概要 |
本研究は、近世における雅楽の伝承状況を明らかにするための基礎資料整備の一環として、天王寺方楽人の岡昌名(1681~1759元昌信、改昌隆、改昌名)による楽書『新撰楽道類聚大全』(1727頃成立、全30巻)を翻刻しようとするものである。近世の楽書として著名なものには、京都方楽人の安倍季尚(1622~1708)が著した『楽家録』(1690撰了、全50巻)がある。これは、雅楽に関する様々な事柄を記した百科全書的性格をもつ楽書で、これまで、その記述内容から当時の雅楽全般について把握できると考えられてきた。だが、京都方の楽書という視点があまり意識されてこなかったのではないだろうか。 徳川時代、天王寺方の活動は大阪だけにとどまらず、三方楽所における存在の重要性は無視できないほどであった。『新撰楽道類聚大全』は『楽家録』に次ぐほぼ同時代の資料であり、天王寺方楽人の手による唯一の楽書といっても過言ではない。そこには、天王寺方の視点という、新たな見地が盛り込まれているはずである。しかし、『新撰楽道類聚大全』は大部であり、研究どころか、未だ資料の翻刻も進んでいない。そのため、『新撰楽道類聚大全』を翻刻し公開することは、雅楽のみならず、一般に活用できる資料となり得るだろう。 初年度は、全巻揃本が所蔵される東北大学狩野文庫、東京藝術大学附属図書館、早稲田大学図書館などの所蔵本を収集するとともに、端本を含む伝本の所蔵調査および収集を行った。楽書としての全体像をみるため、全巻揃本の校合を現在、進めている。校合作業を完了次第、翻刻作業へと移る。同時に、岡昌名に関連する他の史料についても調査、収集を進め、『新撰楽道類聚大全』を著した背景について探りたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
全巻が揃っている東北大学狩野文庫本、東京藝術大学本、早稲田大学本については収集でき、本文の校合作業を逐次進めているが、量が大部なため、未だ全冊は完了していない。
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今後の研究の推進方策 |
翻刻に向けての校合をさらに進めるとともに、収集できていない伝本(揃・端を問わず)について調査、収集を継続して行う。上記以外の揃本としては静嘉堂文庫にあるが、未調査のため優先して収集にあたる。
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