研究課題/領域番号 |
23820075
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研究機関 | 神戸夙川学院大学 |
研究代表者 |
伊多波 宗周 神戸夙川学院大学, 観光文化学部, 講師 (80608688)
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キーワード | 哲学 / フランス哲学 / 社会思想 / 19世紀 / プルードン / 二月革命 / アナーキズム / 進歩 |
研究概要 |
当該年度の成果は論文「プルードン思想の展開における二月革命期の実践的思考の意義について」で発表した。二月革命期のプルードンは、方法論上の主著『経済的諸矛盾の体系』(1846)から、アナーキズムの主張を全面化する『一九世紀における革命の一般理念』(1851)に至る過程に位置し、進行中の革命に対して批判的なスタンスをとりつつ、「秩序の変化」のあるべき姿を実践的に思考した。上記論文において、二〇世紀の研究において軽視されがちであったプルードンの二月革命期の思考が、外見上の錯綜にもかかわらず、初期の著作以来のテーマであった「秩序の変化はいかに実現可能か」に関し、自発性/計画性のいずれにも回収されない論理を紡ぐ努力だったことを示した。 上記論文は、研究実施計画で示した五つのテーマ全てと関わる。(1)プルードン思想における基礎的諸概念群:プルードンは特有の「力」概念を用いており、この概念の分析が本研究の最大の柱であるが、二月革命以前の思想を整理する中で、その重要性について述べた。(2)秩序の変化と思考の変化の関係性:初期の著作において対立的に用いられた「革命」概念と「進歩」概念が、二月革命期、そうでなくなったことの理由を、「思考の変化」への重視の度合いの変化として論じた。(3)プルードンとコント:上述の「進歩」概念について論じる中で、コントの議論枠組を用いつつも、コント主義と見ることはできないと示した。(4)前期/後期思想の分け方:前期思想の完成を1851年に見ることの正当性を示すためにこそ、まず二月革命期の議論を詳細に分析した。今後、『進歩の哲学』(1853)について論じることで、正当化は完遂される。(5)プルードン思想の相対化:二月革命期には特に、他の思想家の議論枠組が多く借用されているが、その大半が説明のための便宜でありつつも、「時代精神」を反映するものであると示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初、三本の論文を執筆する考えだったが、膨大なテクストが存在し錯綜の指摘される二月革命期の思想をはじめに扱ったため、論文としては一本のみしか完成しなかった。とはいえ、当初設定した全てのテーマに見通しを与える論文だったと言え、順調な進展といえる。また、成果として発表していないノートも順調に蓄積されており、研究最終年度の平成24年度は、複数の論文として結実することが確実である。
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今後の研究の推進方策 |
既にノート化の完了しているものを中心に、9月までに学会誌に1~2本の論文を投稿、大学紀要に1本の論文を掲載する予定である。その後の成果は、12月締切の学会誌に投稿、3月締切の大学紀要に掲載ということを考えている。
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