研究課題/領域番号 |
23820076
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研究機関 | 帝塚山大学 |
研究代表者 |
鈴木 博子 帝塚山大学, 人文学部, 准教授 (80610237)
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キーワード | 江戸演劇文化 / 上演記録 / 人形浄瑠璃 / 歌舞伎 / 藩邸 / 対馬藩 / 岡山藩 / 和泉太夫 |
研究概要 |
(1)演劇上演記録データの収集・データベース整備 岡山藩の「日次記」(岡山大学附属図書館所蔵)の再調査を行い、演劇上演記録の抽出について、精度を高めた。これまで演劇関係記事に限定して複写していたのを、「日次記」全体を複写したことにより、前後の記事や全体の経緯を通読することが可能となった。その結果、演劇上演記事の解釈をより精確にすることができた。 (2)江戸演劇文化の国元への影響 大名家において、藩邸を中心に江戸演劇文化がどのように享受されたか、国元へどのような影響を与えたのか、おもに対馬藩の資料を検証して具体的に解明した。藩邸で観覧された人形操りの演目が、小姓によって国元で上演されている事例に注目し、大名家の意向によって、江戸演劇文化が国元へ運ばれていた実態を明らかにした。その成果は論文「大名屋敷における芝居享受-対馬藩宗家を中心に-」にまとめた。 (3)元禄期江戸演劇文化の解明 ニューヨーク・パブリックライブラリー・スペンサーコレクション所蔵の江戸和泉太夫正本を調査した成果を、本研究で作成した上演記録データベースを用いて検討した。江戸の和泉太夫座が女人形の効果を計算していたことを明らかにした。さらに、京・大坂において、近松を中心に、より劇的効果の高い女人形の演出が工夫されていたことについて考証し、女舞との関連を検証した。その成果は、「時代浄瑠璃の女性登場人物」として、シンポジウムで発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的の一つである、江戸演劇文化が武士を中心にどのように享受されていたかという点について、対馬藩の資料検討により、具体的に明らかにし、その文化的な意義に関する見通しも得られたため。
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今後の研究の推進方策 |
対馬歴史民俗資料館所蔵資料の調査を完了するため、夏期休暇を利用して長期出張を実施する。データベース整備については、汎用性を高めることが必要である。そのための方策として、神津武男氏の「人形浄瑠璃文楽の近世期上演記録データベースの作成と活用・公開に関する基礎的研究」に今年度から研究分担者として協力する関係を踏まえ、連携していく予定である。
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