本年度は文法性判断項目を加えた『基礎知識テスト』を、前年度とは異なる大学で524名を対象に実施し、合計有効データは1180名分となった。英語習熟度テストは、それぞれの大学がカリキュラムの一部として実施しているテストを使用し、23年度に実施した大学では639名のTOEIC Bridgeスコア、今年度実施の大学では86名のVELCテストスコアが入手できた。 メタ言語知識を表すスコアは、『基礎知識テスト』結果のラッシュ分析によって得られた受験者能力推定値を使用した。習熟度テストスコアとメタ言語知識の相関は以下の通りであった:TOEIC Bridge リスニング (r = .52)、リーディング (r = .66)、合計 (r = .64)、VELC Test リスニング (r = .65)、リーディング (r = .80)、合計 (r = .79)。リーディングセクションとの相関が一番高い結果は先行研究と同じであり、メタ言語知識が語彙や文法などの正確さと関連が高いことを示しているといえる。『基礎知識テスト』の結果から、対象者の多くが品詞など基本的なメタ言語を認識できないことが明らかになった。英文の文法的間違いを見つけることが困難であり、間違いを正しく説明した文を選ぶことはさらに難しいということも判明した。 本研究の結果から、英語の授業や教科書の日本語での説明を理解出来ない大学生が多数存在すると推定できる。近年、会話力が注目され、文法や文法用語などが軽視される傾向にある。しかし、日本のように生活でほとんど英語を使用しない環境では、明示的知識を養い、暗示的知識をサポートしなければ、会話の上達も難しい。高校でも英語での授業が開始される中、理解できない部分を自分で調べる必要性も増すであろう。日本人英語学習者にとってのメタ言語や明示的知識の重要性に関しては、更なる研究が必要である。
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