研究課題/領域番号 |
23830010
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
池谷 美衣子 筑波大学, 人間系, 特任助教 (00610247)
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キーワード | 社会教育 / ワーク・ライフ・バランス |
研究概要 |
本研究は、現代日本社会において「働くこと」を含めた生涯学習社会の再構築をめざし、ワーク・ライフ・バランス関連の政策・研究の批判的検討から社会教育研究の課題を導出することを通じて、ワーク・ライフ・バランス社会に対応した社会教育研究の新しい領域を創出する基盤形成に寄与することを目的とするものである。 本年度は、以下の課題に取り組んだ。第一に、社会教育研究においてワーク・ライフ・バランスに関わる問題がどのように捉えられてきたのかを整理し、今日的なワーク・ライフ・バランスの観点から検討することを通じて社会教育研究で不十分であった研究視角ないし研究課題の析出に取り組んだ。具体的には、(1)労働者教育(2)婦人・女性教育(男性研究・父親研究)(3)余暇の3つの領域を中心に、文献収集と解題に取り組んだ。 第二に、ワーク・ライフ・バランスの問題を提起する一つの主体として、現在過労死等防止基本法制定運動が市民によって取り組まれていることに着目し、その背後にある過労死問題に取り組んできた社会運動の展開過程を明らかにした。また、社会運動の中には、過労死遺族が研究対象として含まれることから、関連研究領域として心理学・精神医学を中心とした遺族支援の現状と課題について、文献やシンポジウムへの参加等を通じて情報収集を行った。 また、日本社会教育学会プロジェクト研究や共同研究への定期的な参加を通じて、多方面からの情報収集や研究討議を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は関連領域を含めて広く情報収集を行うことができ、研究活動はおおむね順調に進展した。ただし、採用決定時期と業務の繁忙期が重なったため時間的制約が大きく、調査対象者との日程調整が必要な事例調査や研究成果の発表には至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
今後の進展方策としては、これまでの蓄積を踏まえて研究成果を発表することを目指す。次年度に具体的に取り組む課題は、以下の3点である。第一に、社会教育研究との接点の明確化に向けたワーク・ライフ・バランス関連研究の最新動向の検討をおこなう。とくに、ワーク・ライフ・バランス概念の限界や批判を踏まえたうえで社会教育研究に導入することの必要性が、本年度の研究活動からいっそう示唆されている。 第二に、ワーク・ライフ・バランスの問題を提起する一つの主体として、市民による過労死等防止基本法制定運動の動向を把握するとともに、過労死問題に対するこれらの運動の中に見出される教育的側面について、他の労働運動と比較しながら検討する。特に2000年代に派生した若者の労働運動との類似点を明らかにしたい。 第三に、ワーク・ライフ・バランスの問題を提起する市民の側の主体について、父親支援NPOや市民活動を含めて探索的に調査研究を行う。
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