研究リクルートを進め、最終的に平成23年度、24年度合計して、医療機関から22名、福祉機関から12名、教育機関から20名、司法機関13名、養育者から9名の協力を得られた。得られたデータを全て逐語録におこし、グラウンデッドセオリーアプローチにより分析中である。得られた仮説を検証するため、インタビューデータから共通して見出された典型的な連携困難事例を20例としてまとめ、それを研究協力頂けた医療機関・教育機関98名からアンケート調査の協力を得た。 現在、結果を分析中であるが、多機関連携の成功例と失敗例を比較すると、連携を妨げる阻害要因として見えてくるのは、支援者の個人的要因が多く見出された。それは①過去の失敗経験による他機関と連携することへの不安、②子どもに虐待の詳細を尋ねることへの不安、③養育者との対立関係の恐れ、④自分の対応に評価がないことへの不満、④非効率的な連携会議への怒り、などであった。特に、最も見つかりにくい性虐待について、子どもが性虐待を受け、どのような心理的状態にあるのかを知らず、やっと身近な人に開示した被害情報を何度も聞き取ってしまうことで撤回させてしまうことなども具体的エピソードとして見出された。他にも先進国において日本だけが性被害事件が親告罪であること、立件に至る手続き上、小さな子どもにも日時特定が必要とされていることから、発達段階で幼い子どもには「どこ」「いつ」という質問には答えにくいこと、また誘導になってしまうような質問の仕方や、どれくらい子どもに集中力が持つのかなど、基本的な背景を知らないために、司法機関が入る多機関連携に難色を示す支援者も見出された。 量的分析は現在解析中であるが、生成されたを実証する段階でも、医療と教育医機でもかなり同じ虐待に対する見方が違っている。サンプルは少ないが、福祉機関と司法機関でも全く見方が違う点が見出されてきている。
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