金融市場が不完全である場合のバブルの発生メカニズムを記述するモデルを構築した。モデルの特徴は金融仲介機関を明示的に扱っていることである。モデルでは、企業家と銀行部門がともに借入制約に直面する状況を考察している。この枠組みを用いて、どの経済主体がバブル資産に投資をするかということを分析することが可能になった。特に興味深い発見としては、金融仲介機関は家計などに比べてバブル資産に投資をするインセンティブが必ずしも高くないということである。それは、金融仲介機関の機会費用が家計の機会費用に比べて高いことに起因する。次に、それにもかかわらず金融仲介機関がバブル資産に投資を行うための経済条件を考察した。そのための重要な条件の一つに、バブルが崩壊した際に行われる政府からの救済政策へのアクセスの違いがあげられる。バブルが崩壊した際には、銀行部門は多くの場合資本注入などの形を取って救済が行われるが、家計部門に救済策がとられることはあまりない。この事実は皮肉にも、銀行部門がバブル資産へ投資した際の実質的な収益率を高める役割を果たす。これにより、銀行がバブル資産に投資することとなることを発見した。また、家計のようにレバレッジをかけない経済主体がバブルに投資するよりも、レバレッジをかけた金融機関がバブルに投資をした方が、バブルの生成と崩壊に伴う景気の振幅がはるかに大きくなることを理論的に示した。これは現実のバブルエピソード(米国2000年代初頭のドットコムバブルと、2007年のサブプライム危機の違いなど)と整合的である。
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