研究課題/領域番号 |
23830023
|
研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
二宮 元 一橋大学, 大学院・社会学研究科, 特任講師 (10611626)
|
キーワード | 寛容な社会 / 法と道徳 / 市民社会 / 社会民主主義 / 保守主義 |
研究概要 |
本研究の目的は、1950年代後半から60年代のイギリスにおいて行なわれた社会の寛容化に向けた諸改革について考察し、その背景となった社会思想・政治構想の特質を明らかにすることである。 平成23年度の研究においては、寛容化の諸改革が行なわれた前半期にあたる、保守党政権のバトラー内相時代(1957年~62年)に焦点を当てて研究を進めた。具体的には、1、寛容化の諸改革を主導した保守党政治家の思想と言説を検討すること、2、一次資料を考察しながら保守党政権内部の政策決定過程の分析を行なうことに取り組んだ。 1、保守党政治家の思想と言説 R・A・バトラーやT・レイゾンといった政治家の著作や演説の考察を通じて、当時の保守党の内部では、社会の寛容化を押し進めることが、統治の現代化という観点からとらえられていたことが明らかになった。 2、保守党政権内部の政策決定過程 平成24年2~3月に渡英し、オックスフォード大学のBodleian Library所蔵のConservative Party Archiveにおさめられている諸資料の収集と調査を行なった。とりわけ、当時の保守党政権の政策決定において重要な役割を果たしたSteering Committeeの詳細な議事録が入手できたことや、保守政治家たちの未公表の演説原稿が多数入手できたことは、非常に大きな成果であった。これらの資料にもとづいて、政権内部での政策決定の過程とそれを取り巻く政治的対抗関係を明らかにすることができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究においては、関連する二次文献を精読することに加えて、議会議事録や公文書、政党内資料などの一次資料を収集・分析することが重要な課題となるが、いずれの点でもほぼ当初の計画通りに研究を進めることができている。特に、一次資料の収集・分析については、オックスフォード大学の図書館スタッフの協力を得て、順調に進めることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究としては、まず平成23年度に得られた成果を学会報告や投稿論文のかたちで発表するとともに、寛容化の諸改革が行なわれた後半期にあたる労働党政権のジェンキンス内相時代についての研究を深めていくことで、イギリスの「寛容な社会」の全体像の把握につとめたいと考えている。研究を進めるうえで必要な労働党内の報告書やパンフレット等の関連資料を入手するために、平成24年度にも再度渡英し、マンチェスターの労働史博物館等を訪れて、資料の収集・調査に当たる予定である。
|