研究課題/領域番号 |
23830024
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
国本 隆 一橋大学, 大学院・経済学研究科, 講師 (40612271)
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キーワード | 部分ゲーム完全均衡 / 部分ゲーム完全遂行 / 単調性 / 情報頑健性 / 所有権配分 / 完備情報 / 不完備情報 / 契約 |
研究概要 |
Moore and Repullo(88)は部分ゲーム完全均衡を用い、ほとんどすべての社会選択ルールが「部分ゲーム完全遂行」できることを示した。本研究では「単調性」を満たさない社会選択ルールを部分ゲーム完全均衡遂行するメカニズムを考察した。このとき完備情報に限りなく近い不完備情報を考えたとしても、プレイヤーの戦略的行動は完備情報の時のそれと必ずズレがあることを証明した。ここで情報頑健性を満たすメカニズムとはこのようなズレを持たないものと定義する。すると情報頑健性を満たす部分ゲーム完全遂行のためには、社会選択ルールは単調性を持たなければならない。これは部分ゲーム完全遂行による遂行可能性の拡大は、そのメカニズムが情報頑健性を満たさないという犠牲の元に成立していることを示している。 さらに、上記の結果をヨリ具体的な文脈の下で応用し、契約形態の基礎付けを与えることに成功した。売り手と買い手とが契約を取り交わした後、売り手のみが取引する財の品質を高める投資をする。ただ取引が不成立の場合、財の処分を売り手が自由にできると仮定する。これは売り手が企業の所有権をもつと解釈できる。すると、非常に単純な契約によって最も効率的な投資の実現ができる。他方、所有権配分のない場合、売り手は自身の投資の果実はすべて買い手に搾取される可能性を事前に予期できる。すると、どのように複雑な契約を書いても、両者は投資の効率性を達成することが不可能であることを示した。ここでは、売り手と買い手とが財の質に関してもつ情報が完備情報からほんの少しだけズレた不完備情報になることを考え、そのような時にもプレイヤーの行動が完備情報の時のそれと同じであるという情報頑健性を要求することが非常に重要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
プロポーザルに書いた「Subgame Perfect Implementation」に関する予備的結果をきれいにまとめることができ、さらに懸案の不完備契約の基礎に関する議論を完成させることができた。したがって、「Subgame Perfect Implementation under Information Perturbations」というタイトルの論文を2012年2,月に査読雑誌に投稿することができたから。
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今後の研究の推進方策 |
プロポーザルに書いた「Robust Virtual Implementation」に関する予備的結果をまとめ、さらに追加的な結果を得ることを目標にしている。これが大体2012年の夏までを予定している。その後、共著者のいる大学に訪問したり、Skypeなどを使い密なコミュニケーションを図りながら、論文の完成を目標としている。この完成を2012年12月末ぐらいに想定している。
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