研究課題/領域番号 |
23830025
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
井深 陽子 一橋大学, 大学院・経済学研究科, 講師 (20612279)
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キーワード | インフルエンザ / 外部性 / 資源配分 / 危険に対する選好 |
研究概要 |
本研究のテーマは、日本におけるインフルエンザの予防接種政策について、個人の意思決定と社会における最適な政策、並びにその二者の関係を明らかにすることである。この研究は、データ収集と統計的分析により、個人の予防接種需要について考察し、同時に社会的に最適な政策(予防接種率と予防接種分配の両方)について数理疫学的モデルを元に明らかにするという2本の柱からなる。本研究の1年目となる平成23年度には、2つのアンケート調査を含む、次の研究を行った。第1に、個人の予防接種の意思決定を調べるために、「健康に対する行動と選好の実態調査」と題したインターネット調査を行い、約1600人より回答を得た。この調査では、とりわけ予防接種と他の予防行動との関連、さらにはその背後にあると考えられる個人の危険に対する選好との関連を明らかにするために、質問項目を設定し調査を行った。第2に、疫学モデルにおいて、インフルエンザ拡大を規定するための重要なパラメーターとして用いられる年齢群ごとの接触者パターンを把握するための「接触者調査」を国立感染症研究所の研究者と共同で行った。この調査は日本でははじめての接触者調査となるが、その文化的・制度的背景、また人口構造の違いにもよらず、欧州と米国の先行研究で示されたパターンと類似のパターンが観察された。これらの結果を踏まえて、他国のインフルエンザ政策の事例と比較し、また疫学的な考察を深めるために、平成24年3月にイェール大学(アメリカ合衆国)を訪問し、疫学モデリングとインフルエンザ政策に関する専門家である同大学の研究協力者らと意見交換を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定された社会調査(アンケート調査)は終了し、得られたデータの分析の段階に入っている。疫学モデルの構築もパラメーターの1つを調査から得られた。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度は、1点を除きほぼ計画通りに進行したため、平成24年度の研究計画も引き続き申請書の研究計画に基づいて行う。前述の1点とは、費用のデータ収集に関する計画に関してであり、周囲の研究者から診断名別の医療費のデータが入手可能であることがわかったため、当初の計画に挙げたレセプトデータの使用許可申請は行なわず、そのデータで代替することとする。
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