本助成事業の2年目である平成24年度は、大きく二つの成果物に取り組んだ。第一の成果物である論文"Healthcare Subsidies and Community-wide Health Outcomes: An Examination of Influenza Vaccination Subsidies in Japan"は、日本における非高齢者に対するインフルエンザの予防接種に対する市区町村での助成状況の差異が、地域のインフルエンザ流行状況にどのような影響を与えるかを複数のデータソースから作成された日本全国を網羅する自治体レベルのパネルデータを用いて実証的に分析したものである。分析の結果、日本の非高齢者に対する予防接種の費用助成が季節性インフルエンザ流行期間の短縮に寄与したことが示された。同論文を執筆後、国内外での学会発表(日本経済学会(平成24年6月)、ヨーロッパ経済学会(平成24年8月))と研究会報告(カナディアンヘルスエコノミスト研究会(平成24年6月))を行い、論文の成果発表と改訂に努めた後、現在査読付学術雑誌に投稿中である。また第二の成果物として、高齢者に対するインフルエンザ予防接種の助成額の差異が地域の接種率と流行状況や他の健康指標に与える影響を分析し論文としてまとめた。分析の結果、予防接種の助成額は接種率に対しては統計的に有意な正の影響を与えることを示した。一方で、流行状況や他の健康指標に対する影響は統計的に有意には検出されなかった。この論文は改訂中であり、これから国内外の学会発表や研究会報告を経たうえで学術雑誌に投稿予定である。
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