研究課題/領域番号 |
23830030
|
研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
中村 絵理 信州大学, 経済学部, 講師 (00611071)
|
キーワード | 企業の社会的責任 / 産業規制 / コーポレート・ガバナンス |
研究概要 |
本研究の目的は、産業規制や社会からの圧力などの企業外部の要因が、様々な産業における経済的パフォーマンスや投資行動に与える影響を、実証分析によって多面的に分析することであった。そこで、公益事業だけでなく製造業やサービス業などを含めた企業のサンプルを作り、産業規制とCSRが企業活動に与える影響を同時に分析した。これにより、「産業規制は企業の非効率性を増加させる」という公益事業の分野で支持されていた従来の仮説がそれ以外の産業にも一般化できるかどうかを検証した。また、CSRを企業の外部要因として分析に含めることで、産業規制とCSRのどちらがより大きな影響力を持つか比較・検証した。 研究によって、次の2点が明らかになった。第一に、産業規制は企業活動に対してほとんど無視できる影響しか与えない一方、CSRに代表される社会からの期待や圧力は、企業活動を制約または促進することがわかった。近年、消費者や株主など企業の重要なステークホルダーが意思決定を行う際にCSRの活動実績を考慮することが多いため、CSRは企業にとって無視できない課題になっていることを考えると、合理的な結果であるといえる。このように、公益事業以外の産業を含めた分析では、産業規制の企業活動における役割は従来に比べて低下しており、それに代わって社会からの期待や圧力に答えるための企業の自主的な取り組みの重要性が増していることが示された。 第二に、CSRのうち、環境保護のための投資は企業パフォーマンスに負の影響を与える一方、労働問題や社会貢献への取り組みは正の影響を与えることがわかった。これは、環境保護が日本企業において今や標準的な活動として認識されており、企業のブランドイメージ確立には貢献しづらいこと、その一方で労働問題や社会貢献への取り組みは企業イメージを有意に高めることを示唆している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、産業規制や社会からの圧力などの企業外部の要因が、様々な産業における経済的パフォーマンスや投資行動に与える影響を、実証分析によって多面的に分析することであった。現在までのところ、産業規制が企業活動にほとんど影響を与えないこと、様々なCSR活動が企業パフォーマンスに与える影響を明らかにすることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、以下の4つの点を明らかにする予定である。第一に、CSRから経済的パフォーマンスへの因果関係とともに、経済的パフォーマンスからCSRへの因果関係も存在するかどうかについてより詳細に分析する。第二に、CSRの決定要因として何が作用しているのかを分析する。第三に、CSRにおける株主の役割を分析する。これにより、CSRが企業活動に与える影響だけでなく、CSRの決定要因、ステークホルダーがCSRにおいて果たすべき役割を明らかにする。
|