研究概要 |
1.幼児の時間意識の発達に関するレビュー論文(心理科学,2011) 幼児の時間意識の発達を,「メンタルタイムトラベル」としてより実証的に取り組まれるようになってから早10年が経とうとしている。その間,ユニークな研究がいくつか発表されてきたものの,まだなお新しくて複雑な領域である。本論文では,このようなメンタルタイムトラベルの概念や研究成果を整理し,それを自己との関連から問題を指摘するとともに,今後の方向性としてその社会的機能の重要性を指摘する。本論文は,国内の研究がまだ数少ないメンタルタイムトラベル研究の概観を明らかにするとともに,メンタルタイムトラベルの更なる可能性を示しているという点で,意義のあるものとなっている。 2.自己関与を重視した,メンタルタイムトラベルの新たな実験課題「落し物課題」の考案 考案した「落し物課題」は,メンタルタイムトラベルに自己が関与することを重視し,子どもが実際に体験したことを想起させるものであった。子どもに,過去を振り返るための明確な目的をもたせる本課題では,自然な状況を通して子どもの過去の想起を明らかにすることができた。本実験からわかったこととして,4歳児は,過去を振り返ることが可能であるものの,未来を予防することに関しては難しいということを示唆するものだった。 3.他者の時間と対比させた自己の時間に関する実験 自己の時間と他者の時間を対比させるために,従来からメンタルタイムトラベルの研究で使用されてきたトリップ課題を改変し,自己未来条件と他者未来条件を比較した。3歳児の参加児数がやや不足しているため,来年度のはじめに,本実験の続きをおこなう予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該分野の最近の研究を幅広くレビューした論文は,予定どおり完成させた。さらに,2つの実験も既に着手し,1つは終えたものの,もう1つの実験では3歳児のみ,参加児数がやや不足しているため,来年度も引き続きおこない,データを追加する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
次年度に予定している実験をおこなう前に,本年度の実験から新たにわかったことをさらに詰めるための実験をおこなう必要が出てきている。したがって,研究目的はおおむね変わらないものの,より詳細な実験の内容およびスケジュールについては,多少の変更を予定している。
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